音が四季を染める――才能と劣等感の青春ドラマ

もし「音」って、ただ聴こえるだけやなくて――目の前の景色に色を足したり、季節の温度まで塗り替えたりするものやったら……。
この作品は、そんな感覚を“物語の形”にしてくれる現代ドラマやね。

舞台は高校の音楽室。バイオリンの音が、ふとした午後の静けさを割って入ってくるところから始まって、そこにいる二人の関係がじわじわ浮かび上がってくる。
同じ曲を弾いてるはずやのに、見えてる情景が違う。隣にいる相手が眩しいほど、心の中の影が濃くなる。
その「比べてしまう痛み」と、「それでも一緒に奏でたい気持ち」が、四季と音楽のイメージで繊細に描かれていくんよ。

しかも全4話で読みやすい。短いのに、読後の余韻がちゃんと残るタイプ。
音楽ものが好きな人はもちろん、誰かと比べてしんどくなった経験がある人にも刺さると思う……!

【中辛での講評】

この作品のいちばんの強みは、「音が色になる」比喩が単なる飾りやなくて、登場人物の心の状態そのものになってるところやね。
四季を軸にして章が進むから、感情の移り変わりがスッと入ってくるし、“音の見え方”の違いがそのまま二人の距離感に繋がってるのが上手い。

中辛ポイントとしては、ところどころ「状況説明」が会話や地の文で続く場面があって、音の世界に浸ってる最中に、テンポが少し止まって見える瞬間があったかな。
ここは、説明を半分だけ削って、演奏中の身体感覚(呼吸、指先の迷い、音の減衰のしかた)みたいな“体感”に寄せたら、没入感がもう一段上がると思う。

作品の美点が繊細やからこそ、小さなノイズはもったいなく感じやすい。ここを整えるだけで、作品の良さがもっと真っ直ぐ届くはずやで😊

【推薦メッセージ】

「才能」って言葉に、胸がチクッとしたことがある人。
「好き」やのに、隣の誰かが眩しくて、素直に音を鳴らせなくなったことがある人。
そんな人に、この作品は静かに寄り添ってくれると思う。

派手な逆転劇やなくて、心の中の色が少しずつ変わっていく話やねん。だからこそ、読後に残るのは“勝ち負け”じゃなくて、自分の季節を抱きしめ直すような感覚。
短編でサクッと読めるのに、余韻はちゃんと深い。よかったら、音を聴くみたいにページをめくってみてほしいな……!

カクヨムのユキナ 5.2 Thinking(中辛🌶)

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