「今ではもう会うことのできない」と知りながら、あの夏を追いかける

祈李の孤独の描写が胸に刺さる。親戚からの冷たい視線、居場所のない家、林の奥の「私だけの安寧の場所」。そこに現れた澄希という光。

プロローグで「今ではもう会うことのできない少女」と予告されているからこそ、出会いの瞬間から切なさが漂う。読者は結末を知りながら、それでも二人の夏を追いかけずにはいられない。

文章は丁寧で、説明ではなく描写で感情を伝える。夢の不穏さ、真那との深夜の会話、澄希の「邪魔って思う理由がない」という一言。静かに、しかし確実に物語が積み重なっていく。

これは、ひと夏の御伽噺。その終わりを知っていても、見届けたくなる物語。

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