概要
空になったロッカー、消えた高菜弁当、そして偽造された履歴書。
平穏だった病院に、疑念の波紋が静かに広がる。
やがて、一人の男の見えない孤独と哀しみが浮かび上がる——
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!消えた高菜弁当と名もなき同僚。静かな余韻が胸を打つ病院ミステリー!
ある地方病院の男子更衣室で起きた、職員の所持金盗難事件。
その被害品リストの中に、現金とは不釣り合いな「一個の高菜弁当」が紛れ込んでいました。時を同じくして忽然と姿を消した、真面目で無口な介護助手の男。
彼が残していった空っぽのロッカーと偽りの履歴書から、物語は静かに動き出します。
本作は、犯人探しのスリルだけを追うサスペンスではありません。
暴かれていく不自然な生活の痕跡をたどるにつれ、浮き彫りになるのは、現代社会の片隅で誰にも頼れず孤立を深めていった一人の男の切実な吐息です。
なぜ彼は名前を偽らなければならなかったのか……。
なぜ同僚の弁当を奪うしかなかったのか……。
派手な演出を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!深く心に残る、ある病院での窃盗事件
とある病院に新しく入った介護助手の『山
下健悟』
黙々と勤務する彼は誰も寄せ付けない独特の雰囲気があり、他の職員も少し距離を置くようになります。
そんな中、看護師である坂口のあるものが更衣室のロッカーから無くなり、物語が動き始めます。
読み進めていくうちに明らかになる『山下』の行動、生活、そして最期。
全て語られるわけではないので、『山下』に何があったのか、誰も分かりません。
また窃盗などの犯罪は許し難いことなのですが、それだけでは済まない事情が想像でき、とても心苦しくなります。
彼の行動は『生きたい』という思いからだったのか、それとも『死ぬ勇気もなくただどうしようもなく生きていただけ』…続きを読む - ★★★ Excellent!!!誰でもなくても、記憶に刻まれる——
春風とともに赴任してきた介護助手・山下健吾は、力仕事を黙々とこなす真面目な男だった。
休憩時間になると姿を消し、私生活を尋ねると巧みに話題をかわす彼。
そしてある日の夜勤明け、弁当とロッカーの現金が消え、山下も姿を消した。
偽造された履歴書、偽りの電話番号——平穏だった職場に疑念の波紋が広がり、「彼はいったい何者だったのか」という謎が頭をめぐる。
気配りができ頼りになる若者は、何を思い、消えたのか。
金木犀の香りとともに残るのは、人という生き物の複雑さと、解けることのない疑問から滲むリアリズム。
職場で起きる静かなミステリー、読み終えたあとも余白が想像を誘い続ける、おすすめの一作です。 - ★★★ Excellent!!!「この空白は、一体何を意味しているのか……?」
春の日差しとともに現れた、ひとりの介護助手・山下健吾。
与えられた業務を真面目に淡々とこなし、患者の扱いには力強さと細やかな気配りが際立つ。
ただ、休憩時間になるといつのまにかナースステーションから消え、私生活について尋ねると巧みに話題を逸らされる。
「山下さんっておとなしいけど、なんか不思議な人だよな」
それが看護師たちが抱く、山下の印象だ。
そんなある日、看護師・坂口のロッカーから弁当が消えた。
買い忘れか? と思った矢先、男子更衣室で職員のお金が無くなったという知らせが届く。
だが、看護部長がふと漏らした「……山下介護助手が、事件のあとから姿が見えませんね」という一言から、事件…続きを読む