概要
「音羽(おとは)」という名を持つ少女は、もう長い間、声を失っている。
心因性失声症――それは、心が傷つきすぎて、声が出なくなる病。
学校でも、家でも、誰も本当の痛みに、見て見ぬふりをしたまま。
いつしか彼女自身も、本名すら名乗れなくなっていた。
「音羽」ではなく、ただの「音」。羽を失った、自分。
そんな彼女の前に、ある日──かつての幼なじみ・清瀬 澪(きよせ れい)が現れた。
数年ぶりの再会に、音羽は何も言わなかった。言えなかった。ただ、目を伏せた。
けれど澪は、気づいていた。
彼女が、かつて笑い、話し、名前を呼んでくれた「音羽」だということを。
そして彼は、知っていた。
笑うことを忘れた人間の静けさを。
声を失うほどの痛みを。
――か
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!~声を失った少女が、もう一度「自分」を見つける物語~
心因性失声症によって声を失った音羽と、幼なじみの澪との再会から始まる物語。痛みや誤解の積み重ねを丁寧に描きながら、二人が少しずつ歩み寄っていく過程が静かに胸に響きます。
派手な展開で引き込むタイプではなく、感情の積み重ねでじっくり読ませる作品です。比喩を多用した叙情的な文章は美しい一方、心情描写がやや長く感じる場面もありましたが、それも音羽の「言葉にできない思い」を表現するための手法として機能していたと思います。
声を失うこと、それでも誰かとつながろうとすることの意味を考えさせられる、丁寧に書かれた青春小説でした。 - ★★★ Excellent!!!祝・書籍化
私が尊敬する栗パン先生の、新たなる名作です。
このたび書籍化が決まったそうなので、皆さん無料で読める今読んで、また本も買いましょう。
物語は、ある日声が出なくなった少女と、複雑な家庭に生まれ絶望感を抱いている少年の出会いから始まります。
いじめや虐待、あらぬ誤解など、取り巻く環境の不幸の連鎖に負けず、二人が幸福と勇気を取り戻していく姿を描きます。
それまでの間が辛く、長いかも知れませんが、主人公たちとともにそれに耐えたあと、ラストに待ち受けるカタルシスは、他に変えられないものがあるでしょう。
出会えて良かったと思える作品です。もう一度言いますが、今のうちに、今すぐ読みましょう。 - ★★★ Excellent!!!これは、努力の先に未来を見つけた或る少女と少年の物語
最後がとても印象深い作品でした。
短い言葉では、表しようのないくらい、たくさんの思いが詰まった作品でした。
こんなにも熱いパッションと勇気と元気をもらえる作品は、ちょっと類を見ないほどで、一話一話に込められた作者の思いが、それを体現させてくれます。
本当に深く考え抜かれて書き起こされた文章だなと、書き手として、強く感じます。一行一行が尊さと、強い意志を持っているかのような、それこそ詩のような重みを感じさせる文章で、読み手としても、気持ちを集中しながら丁寧に読み進めていかなければ、掴み取ることが出来ない、そんな印象を持ちました。
この物語を読むことで人生観が変わる、そこまでの力…続きを読む - ★★★ Excellent!!!声なき少女の、声なき叫び
人は自分のことをどう思っているんだろうか。ある人は世界一優しい人、天才と思っているだろうし、ある人はどうしようもない奴、身勝手なクズ野郎と自嘲するだろう。それだけならまだ良い、問題なのは、その思い込みが自分を腐らせてしまうことなんだと思う。言い換えれば、自分のことを愛せなくなることなんだろうか。
本作の主人公、音羽ちゃんは声が出せない。それ故に、身勝手な偏見やいじめに晒されていた。人間の悪意が彼女を傷付け、傷付けられた自らの心が自分を傷付ける悪循環。自分を愛せなくなっていたといったところだろう。
それでも、彼女には大切な仲間がいる。野良猫の小春に、陽気なイケメンの澪。彼らの善意が、ボロ…続きを読む