死んでしまった少女との出会いから始まる物語なのに、読み終えたあとに残るのは、
怖さよりも静かな温かさでした。
人とのあいだに壁を作って生きてきた来栖ハヤト。
そして、死者となって彼の前に現れた水瀬ミヤコ。
最初の二人は、決して綺麗な関係ではありません。理不尽で、強引で、どこか噛み合わなくて、名前の付けようがない。
けれど、未練を抱えた死者たちと向き合ううちに、ハヤトの中にあった壁が少しずつ揺らぎ、ミヤコの笑顔の奥にある優しさや危うさも見えてくる。その変化がとても丁寧に描かれていて、気づけば二人の距離から目が離せなくなっていました。
ミヤコは、ただ可憐なだけのヒロインではありません。
明るくて、強くて、時に狡くて、でも誰かの痛みに本気で泣き、怒ることのできる少女です。
ハヤトもまた、冷たく見える言葉の奥に、不器用な優しさと深い情を隠している。
二人がぶつかりながら、少しずつ互いを知っていく過程がとても魅力的でした。
特に印象的だったのは、死者の未練を晴らすという題材を、安易な奇跡や感動だけで終わらせないところです。
失われたものは戻らない。
取り返しのつかない痛みも、理不尽さも、確かにそこにある。
それでも、最後に少しでも温かい記憶を持たせてあげようとする時間が、この作品にはあります。
救いとは、悲しみをなかったことにすることではなく、悲しみを抱えたままでも「出会えてよかった」と思える場所まで寄り添うことなのかもしれない。
そんなことを考えさせられました。
夏の暑さ、葬儀の花の匂い、図書館の静けさ、写真に残る思い出。
ひとつひとつの描写が、死者と生者のあいだにある淡い光を浮かび上がらせていて、とても美しいです。
怪異であり、青春であり、恋であり、喪失と救いの物語。
読み終えたあと、切なさと温かさが同時に胸に残りました。
これから二人がどこへ向かうのか、大切に見届けたくなる作品です。
「昨日、死んだの」この一言から始まる平成初期の青春怪談です。
壁を作り続ける文学少年・ハヤトと、死んでもなお笑顔のマドンナ・ミヤコ。二人が縮まるほど、ヒロインが幽霊であるという事実が読者の胸を締め付けます。「始めから不可逆が確定している物語」という既存レビューの言葉が、この作品の本質をそのまま言い表しています。
初田サヨリ編という寄り道が物語に深みを与えており、ミヤコ自身の謎は第2章でじわじわと明かされていく構成も巧みです。文体が美しく、情景描写が丁寧で、白菊とユリの匂いまで届いてくるような読み心地。★1350超えも納得の一作です。
ゆつみ かけるさん、企画より参りました柴井縫生です。
冒頭を読んだ瞬間、完全にあなたの構築したCSEに囚われました。
(確定した『死』) × (幽霊とのコミカルな『青春』) = 笑顔のまま息が止まる『絶望と純愛』
普通の恋愛小説ならプラスに働くはずの「コミカルな日常」や「青春の輝き」が、ヒロインがすでに死んでいる幽霊という絶対的な事実と掛け合わされることで、読者の胸を抉る「不可逆の痛み」へと変貌する。
笑えば笑うほど、惹かれ合えば惹かれ合うほど苦しくなるようなこの構造、まさに極上の【CSE文学】です。
「あなたが私を殺した」という理不尽な猛毒のスタートから、この叶わぬ恋がどんな創発を起こすのか。この連鎖を、最後まで見届けさせてください!
初田サヨリ編までの感想です(ミヤコさんのキャラ好きです❗️)。
幽霊になった同級生の少女ミヤコと関わり主人公のハヤト。ミヤコはハヤトに恋しており、ハヤトもミヤコのペースに若干呑まれながら人ならざる者となった死者たちと関わる物語。
ミヤコの死には何やら謎があるのですが、物語はいきなりヒロイン問題には行かず、彼女をバディとして、別の少女の問題に移ります。
その物語の重く、切ないことーー
少女は生を求め、そして家族を愛していた。そんな彼女を主題としたサヨリ編は、序盤ながらとても感動的なエピソードでした。
これから先どういう形に進むかはわかりませんが、ここまで丁寧に物語を作れる作者になら安心して身を任せられると思いました。
地の文しっかり系。ラーメンで言うとチャーハン。
とにかく意味のない文が無い、行動→説明の繰り返し、適切な感情表現。
コメント欄を見るとその時の登場人物が何を思ったか、質問に対する答えが書かれています。
そこから受ける一つ一つ考えられてる印象。
女に最初イラッときたけど、顔が良いからみんなに受け入れられてそうなったのかな。とか
ん?って1回止まるところにちゃんと整合性があるという安心感が良い。
その圧倒的基盤の上に立つ物語。
幽霊に化けて出てきた可愛い女の子に理由もわからず溺愛される男の子が主人公。
正直ロマンを感じる!全人類の夢だからね、叶えてくれてありがとう!
更新を、正座で、背筋伸ばしながら、待ちます。
物語は、白菊とユリの匂いに当てられて主人公が頭痛になる場面から始まる。とても印象的な書き出しです。平成2年7月27日という日付が、じめっとした夏の空気をはっきり感じさせます。水瀬ミヤコの「取り憑いちゃった」という一言と、触れられない手のひんやりで「触れたいのに触れられない」というテーマがすぐ伝わります。公園では亡者の不気味なささやきから、来栖の「助走をつけてぶん殴れ」で水瀬が投げ飛ばす一転が効き、動物園の『ライオン』のはしゃぎは、後日の「想って燃やす」儀式へつながる伏線に。黒焦げになったはずのぬいぐるみが幽霊の少女に本当に届く瞬間、この世界の理と登場人物の気持ちが自然に噛み合い、読後感がぐっと深まります。匂いや温度まで伝わる描写、受け身でないヒロイン、まっすぐで時に痛い語りがよくかみ合い、各章が短編の手応えと長編の余韻を同時にくれる一作です。
この物語を読んで『七つ前は神の内』という言葉を思い出しました。昔は子供が亡くなることが多くて、そのような宗教観が出来たのかもしれません。
主人公が霊達と当たり前のようにやり取りをするのですが、何も違和感がない。むしろ生活が充実している。霊的な存在を日常的に感じていたら、人生がより豊かに、心も平和になるかもしれない、と思いました。日本でも大昔は、霊的な存在がもっと身近だったはず。
だからこのお話に惹かれるのだと思います。我々は霊のことを忘れているだけで、実は近くにいることを知っている。そんな風に想わせてくれる小説です。文章が綺麗で読みやすく、淡々と進む感じも良いです。
「お? なんか応援ボタン押してくれてる人がいる。さて、この人はどんな作品を……」
きっかけはそんな感じでしたが、なるほど!
多くの人が評価している理由が分かりました。
冒頭は、ややコミカルな雰囲気で始まります。
しかしその先に待っているのは、主人公の視点で丁寧に描かれる、等身大で繊細な世界。
第1章はセンシティブなテーマを扱っていて、どうしても気持ちが沈んでしまいます。
ですが、それだけではありません。
幽霊のヒロインが重い空気を和らげる役割を果たしてくれていて、作品全体をオールラウンダーなエンタメ作品へと昇華してくれています。
皆さんも是非、読んでみて下さい!