桜の下の喫茶店には転生者が集う。不死の魔女を巡るダークファンタジー
- ★★★ Excellent!!!
異能ゆえに居場所のなかった少女・レイチェルが訪れたのは、悩みを解決してくれるという噂の喫茶店「桜」。そこで出会った人形のような女性・アリアに、レイチェルはなぜか湧き上がる憎しみを抑えきれずナイフを振り翳し――
という、かなりショッキングな展開から始まる本作。レイチェル自身もショックを受けますが、喫茶店のマスターでありアリアの夫である時也から見に覚えのない憎しみの正体を明かされ、やがて喫茶「桜」で働くようになります。
喫茶「桜」を切り盛りするのは時也と、もう一人アリアを愛する男性・ソーレン。レイチェルの視点で謎だらけの二人の過去が紐解かれていくにつれ、彼らの魅力に引き込まれていきます。物腰柔らかな時也と口の悪いソーレンはタイプが真逆で馬が合わないのですが、なんだかんだいってアリアのために阿吽の呼吸を見せるところはついニヤニヤして読んでしまいます(笑)
血生臭いシーンは多いものの、同じくらい美しい情景描写や緻密な心理描写も多い本作。詩的な文体が神秘的な作品の雰囲気にマッチしていて、じっくり味わいたくなる一作です。