人を凌駕する天の覇者と軍人の静かな交流を描いた傑作

龍木、それは天翔ける龍が死期を悟り、地に降りてその見目を樹木へと変えた姿。しかし完全に死んだわけではなく、人が触れれば暴れ回り破滅をもたらす存在。
そんな龍木の上に落ちてしまった女性軍人、凪。当然焦るわけですが、その龍木から聞こえてきたのは故郷のさざなみの音で……。

地上の覇権を争い続ける人間と、人を凌駕する龍という決して相容れないはずの二人の間に流れる奇跡が、美しく静謐な文体で描かれています。森の中にぽっかりと開いた空は、時に残酷で容赦のない理に差し込む一筋の救いのよう。
短編とは思えないほど深い世界が広がっています。

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