「私、エルフになろうと思うの」少女のその言葉の意味は──。

「私、エルフになろうと思うの」
これは、冒頭で主人公・リディアが言う言葉。

その言葉に、幼馴染のネリオは「なりたくてもなれるものではない」、と返す。


このリディアの言う「エルフ」は、物語に出てくる“芽吹きの守護者”のことである。
森の植物や生き物を守り、精霊と心を通わせる存在だ。

リディアがなりたいのは、種族としてのエルフそのものではない。
エルフが象徴する、森の環境を守る存在である。


リディアはその理由を「日々の糧の感謝のため」と言った。
そして彼女はそれを実行すべく、森に入っていき、日々森の中で作業し、それに没頭する。


物語が進むにつれ、リディアがエルフになりたい本当の理由が明らかになる。
もちろん、「日々の糧の感謝のため」でもあるだろうが、それだけではなかったのだ。




本作は著者らしい“命の巡り”が描かれた物語である。
わたしはこの命の巡りの考えが好きで、本作でもそれを読むことができ、とても嬉しく感じた。

本作に登場する物語『芽吹きの守護者』では、森に還った魂が“精霊となってずっと森と共に在り、いずれまた新しい生命となって生まれる”とされている。

命は終わっても、森に還り、形を変え、また巡ってくる。
その思想が、リディアの行動とセリフを通して丁寧に積み重ねられていく点がとても美しい。

リディアの元に“芽吹きの守護者”が現れたのは、それまでのリディアの献身に対する、森からの祝福のようである。


ラストを読むと心が温かくなる。
とても素敵な作品なので、ぜひおすすめしたい。