呼吸域の檻

息をすることすら『呼吸タグ』で管理されるドーム都市「アーク」。最下層ディープゾーンに住む少年レインは、七年前の人体実験で得た『呪われた肺』を隠し、過去から逃れるように孤独に生きていた。鉄錆の味がする空気を吸い、異常な効率で酸素を取り込むその肺は、彼に特殊な力を与える一方、制御不能な悪夢をも見せる「呪い」でもあった。

彼の灰色の日常は、最上層から来た少女アリアとの運命的な出会いで一変する。原因不明の呼吸困難で死にかけていた彼女を、レインは危険を承知で、自らの特殊な『息吹』――生命エネルギーの一部を分け与え、救ってしまう。それはアリアに、絶望的な状況の中で初めて希望を感じさせるものだった。

呼吸管理庁長官の娘でありながら、生まれつき肺に問題を抱え、常に「息苦しさ」に囚われていたアリア。この出…続きを読む