絵描きのあやかし

12歳の小学六年生、ゆかりは花の絵を描くのが趣味の女の子。
クラスにあまりなじめない中、まわりの人よりも画力が劣っていること、少し前に『変な絵』と言われたことを気にして、絵が描けなくなってしまう。
いつものような絵を描くために、昔から来ていた家の近くにある小さな山で立ち直ろうとするも、うまくいかない。
そんなゆかりのもとに、烏天狗のクロカはあらわれた。

「きっと、絵が、君の言葉になってくれる」

クロカは烏天狗の落ちこぼれで、大きな翼は生えているが、空を飛べることができないのだという。
代わりによく絵を描くクロカは、苦しみながら絵を描くゆかりを変えるため。
ゆかりは、今の自分を変えようと。
あやかしの山に飛びこんだ。

すんだ空気の中に、たくさんの花の甘い香りがただよう、美しい景色が広がる…続きを読む