繰り返し体験する、という心のトラップ

 一度や二度なら偶然。でも、三度以上続くなら、そこにはきっと「意味」がある。

 これはきっと多くの人が無意識に抱えている感覚でしょう。時にはそれを「運命」や「御縁」と呼んだり、「自分の人生の中では意味のあるものだ」なんて思ってしまうことも。

 そのような形で「繰り返し」を経験すると、それを気にしてしまうのが人情。

 本作の主人公も、繰り返し「夢」の中に現れるものに強く心を惹かれるようになります。夢の中に何度も現れる「あるもの」。
 それとどうにか繋がりを持ちたいと強く願うようになっていく。

 果たして、この夢の正体は?

 本作で明かされた真相を見て、「繰り返し」や「偶然が重なる」ということの意味について改めて考えてみたくなりました。
 なんでも「意味」を見つけようとしてしまう人間心理の落とし穴。そういうものに陥らないよう、常日頃から気を付けねばならないかもしれない。

 もしかするとこれから数年後、ないし十数年後、そういう心理を利用した新たな「詐欺」みたいなものも生まれるかもしれないから……。

 本作はそういう意味で、「いつか起こるかもしれない何か」を予習するきっかけになるかもしれません。

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