聖女の恋が政治を動かす、骨太百合譚。痛覚の描写が凄い。制度設計も熱い!

 悪役令嬢×百合×ARPG転生を、軽妙な一人称と堅実な設計で牽引する快作である。魔王城の冒頭で「バフ…じゃなくて」とメタに滑り込む掴みが巧い。

 見どころは“痛み”の実在感だ。魔王の自爆瘴気から聖女オーリスタを庇う場面、黒い氷の寒気が骨に刺さり、昏睡明けに空白の106日が突きつけられる展開が鮮烈である。

 論功行賞の玉座の間では、黒い礼服と純白の礼服の対比の中、「生涯の伴侶」宣言が炸裂。ざわめき、重臣と教会の視線、国王の慎重な“持ち帰り”まで会話の球筋が明快だ。

 続く制度設計パートも骨太。枢機卿との密談で課税・司法権の欲求を見抜き、合議裁判と税の公益再配分を提示して物語を「統治」へ広げる。

 決定打は関係性の倫理である。聖女の力を回収すると主人公の手に黒い霜、預け直すと五感が戻る——「彼女がいないと1週間しか保てない」条件が恋を責任へ格上げする。

 恋と政治、医療と呪術が一体化する設計が見事。先の駆け引きと“共生”の行方まで、強く追いかけたくなる一篇だ。

追伸
僕は、ゲイも百合も苦手です。世の中の傾向と逆行しているのは自覚していますが、中々慣れません。ですから、百合の話には触れず、それ以外のレビューしか出来ていません。許してね。

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