妖狐の嫁入り

　八尾マコトは現代を生きる妖狐である。
　幼少期は仲間と共に山で暮らしていたが、妖狸との縄張り争いに敗れたことにより、逃げ落ちた人里で人間としての生活を余儀なくされた。

　そうして十数年。
　一緒に逃げ延びていた妹を養う為に、鬱屈とした思いを抱えながらも人間社会の仕事に勤しむマコトであったが、ある日転機が訪れる。
　音無雪人という天涯孤独の男が、資産家の祖父から相続した手付かずの山を、幾つも所有していると小耳に挟んだのだ。

　かねてより自分の山を手に入れたかったマコトは早速お嬢様に扮すると、彼が参加していた婚活パーティにて接触。
　猛アタックを重ねた末に、婚約を視野に入れたデーティング期間を勝ち取った。

「やったぞ！　これでコイツの山はうちのもんや！」

　などなど、勝ち確同然にように…続きを読む