緞帳に呼ばれる日を待ちながら

幼なじみの演技に心を奪われた瞬間から、かがりの中で何かが弾けた。でも「私は傍観者」と自分を規定する彼女は、まだ舞台の上に立てずにいる。

この作品の魅力は、比喩と内省が織り交ぜられた詩的な文体にある。「盛る火で暖はとれない」「刺さった楔を満足に抜いた私は、あの子みたいになれるかな」——Web小説としては異例の純文学的アプローチが、登場人物たちの繊細な心の揺れを丁寧に掬い上げている。

クラブ紹介の劇中劇『おむすびころりんとちころりん』のナンセンスなユーモアも印象的で、作者の引き出しの広さを感じた。

「緞帳(カーテン)に呼ばれる」——そのモチーフがタイトルと響き合い、演劇部に集う少年少女たちがそれぞれの「なりたい自分」に手を伸ばす群像劇の幕が、静かに上がろうとしている。

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