天国そして地獄とは?

 猫のパルメザンはおばあちゃんが大好き。
 しかし愛する飼い主は突然、自殺してしまった。
 ――――地獄に落ちる、と確信していたにも関わらず。

 新しい飼い主に引き取られても、パルメザンの頭の中はおばあちゃん一色。

 彼女が生前に犯した「悪いこと」とは?
 そもそも、なぜ死ななければならなかったのか?
 わからないことだらけ。

 無気力にすら陥ったある日、街のいたるところに幽霊が「視え」てしまった。

 ほとんどの者は悪霊。
 人がその存在に気付くと、呪い殺されてしまう。
 そう、パルメザンが気づかせてやれば……人が死ぬのだ。

 おばあちゃんに再び会えるなら、地獄にだって行ってやる。
 一緒に焼かれ、刺され、茹でられたって構わない。
 パルメザンは得た力を使い、町を歩きだす。

 次々に出てくるクセある人物、やむを得ない状況、迫られる選択。
 それらは次第に、呪いの真実をさらけ出す。

 その救いのない性質は、我々が生きる世界にも共通。
 人間のどうしようもない残忍さであり、どうしようもない労しさでもあり……

 はたしてパルメザンは地獄に行けるのか? おばあちゃんに会えるのか?
 それとも――――

 ジャンルや創作物、の範疇に留まらない名作。

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