概要
大切にしていたものがある。けれど手放してしまった。諦めきれずに後悔だけが残っている。
大切にされていた。けれどその手から滑り落ちてしまった。もっとあなたの役に立ちたかった。
これは、大切な失せものを諦めきれない持ち主たちと、その手を離れてしまった品々が再び縁を結ぶ物語。
舞台は骨董屋よすが堂。今日も縁を求めて物たちが迷い込み、店主の紬がその声を聴く。
結ばれていく縁の見届け人は、助手として身を置く阿近だ。彼もまた縁を探す一人であり、多くの縁を見届けることで己の帰る場所を探している。
『失せもの、探しもの有り〼』
どうしても見つけたい大切なものがあるならば、よすが堂店主《紬》にご相談ください。
※Nolaノベルにも掲載中
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!縁の中に生きる。縁の中で出会う。縁の中で死ぬ。
時に私は、世界には運命というものが実在するんじゃないかと思う。本来行くつもりはなかったのに、ふと思い付きでなんとなく行ってみたらかつての友達と出会ったりとか、このレビューを読んでるあなたにもそういう事はないだろうか。世に人は、それを『縁』と呼ぶのだろう。
とある寂れた神社のそばに、よすが堂はある。不思議な男が店主を務めるこの店は『縁』を取り扱うスペシャリストだ。ある時は少女と祖母の思い出のネックスからまたある時は荒ぶりし神まで、失ったり様子がおかしくなった縁まで協力してくれる。ちなみにお代はタダ。誠実な気持ちと縁を愛する心だけで十分である。
人の心と思い出が集う温かな空間。もし何か…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一つひとつの縁が、最後に美しい一本の桜になる。
これは「失せ物」を探す物語ではなく、「失われかけた縁」を拾い上げる物語なのだと感じました。骨董品は単なる小道具ではなく、持ち主の人生や祈りを静かに記憶する語り部。その一つひとつが次の物語へ自然に繋がり、読者の心にも優しく縁を結んでいきます。
特に印象的だったのは、物は人の手を離れても、想いまでは失われないという一貫したテーマです。誰かの手放したものが、別の誰かの未来をそっと照らしていく構成は見事で、「縁」とは人同士だけでなく、時代や記憶までも結ぶものなのだと深く考えさせられました。幻想的でありながら足元には確かな人間ドラマがあり、読み進めるほど世界の奥行きが静かに広がっていきます。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!~「物の声を聴く店に、迷い子たちが今日も辿り着く」~
失くし物の神社という入口からして既に心を掴まれる。急いで鈴を鳴らしながら「ネックレス! ネックレス!」とひたすら唱える瑠璃の姿に思わず笑ってしまいながらも、どうしても見つけたいという必死さが伝わってきて、自然と彼女の側に立って物語に引き込まれていく。
この作品の際立った強みは、「縁結び」という言葉の射程を恋愛から解き放って、人と物との間に引き直しているところだ。捨てられたのではなく迷い込んでしまった品々が、それぞれに持ち主への想いを抱えて帰る場所を探している——その構造が、第0話の庭の描写と序章の丁寧なセッティングによってごく自然に受け入れられる。
文章そのものが気持ちいい。砂利の音、金木犀…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人と物の縁を結ぶ骨董屋さんの優しい物語
縁結びといえば人間同士の縁を思い浮かべるでしょう。けれど、本作では人と物との縁を結びます。
手元を離れてしまったけれど、そのモノを大切に想う元の持ち主。
再び持ち主との縁が結ばれることを願う、モノ自身。
両者の想いが互いを引き寄せ、時として縁を結び直すのですが、その手助けをするのが《よすが堂》の店主《紬》と、助手の《阿近》です。
ネックレスや万年筆など、紬たちは様々な物の想いを汲み取り、それらを探す元の持ち主の気持ちに寄り添い、縁を結んでくれるのです。
本作はいわゆる連作短編型の長編。各章ごとにエピソードがまとまっているので、短い区切りごとに満足感を得られます。
それでいて、章を跨いで紡…続きを読む - ★★★ Excellent!!!大切な記憶を結び直す、やさしい骨董屋の物語
この作品は、失くした物を探す物語でありながら、その奥にある人の記憶や後悔、そして大切な相手への想いを丁寧に描いている作品だと思います。
舞台となる骨董屋「よすが堂」は、ただ失せ物を見つける場所ではなく、持ち主の手を離れてしまった品々と、もう一度向き合いたい人の縁を結び直す場所として描かれています。
序盤のネックレスのエピソードでは、亡き祖母の想いを受け取る瑠璃の姿が印象的でした。壊れないことや元通りに戻ることだけが救いではなく、形を変えても大切な想いは残るのだと感じさせてくれます。
また、第9話の万年筆のエピソードも良かったです。墨田が探していたのは一本の万年筆ですが、実際に向き合って…続きを読む