なんで、私は死にたがりなんだろう。
原因を、思案する。
生まれながらの、無能だから。
気弱だから。
ガキだから。
声が小さいから。
ブスだから。
星の数ほど浮かぶ。
私には、必要とされている実感が、なかった。
常に、裸で体育館に放置される気分だった。
逆側を、見つめる。
私の生きる喜びって、なに?
ご飯は、好きじゃない。
引きこもり時代、おにぎりにカミソリが、入ってた。
男も嫌い。
友達は、皆無。
趣味も、仕事も、楽しくない。
ただ、後悔しながら、生きてるだけ。
でも、ナギサちゃんと出会って、感覚の全てが裏返った。
お嬢様の一挙手一投足に、心を。
声を聞くだけで、頬が緩む。
温もりのある手料理が、大好きになった。
ナギサちゃんとなら、私、ほがらかに笑える。
じゃあ、ナギサちゃんは?
薄命のお嬢様は、なぜ、私と一緒に死んでくれるの?
最初から、考えないようにしてた。
でも、早く聞かないといけない。
今のナギサちゃんは、1日毎に、記憶を失う。
眠るたびに、頭部から青薔薇が芽吹き、1か月分の彼女を吸い上げる。
症状を分析できた時には、3か月前のナギサちゃんに逆行していた。
でも、彼女は、変わらない。
「ねえ、ナギサちゃん、私のこと、どう思ってるの?」
「どうしたんですか? いきなり」
「聞いたことなかったなって」
いつも、第一声で質問する。
返ってくる答えも、録画みたいに同じだ。
「恵巳さんは、あたしのお花畑なんです」
「……うん」
穏やかな口調に、お日様のような顔。
「ずっとそばにいたい。自分が死んだら、墓をたてて欲しいって思えるぐらい、落ち着くんです」
脳がじんわりと温まり、涙ぐむ。
「昨日のナギサちゃんも、同じこと、言ってた」
「え、昨日……? あたし、言いましたっけ……」
「病気のせいで、忘れてるの」
「……え?」
私は、説明する。
ナギサちゃんは今、眠るたびに、記憶を失うこと。
治療法もないから、自宅療養を告げられたこと。
「ふふふ。恵巳さんも、冗談が上手になりましたね」
スマホとテレビを見せると、目の色が変わった。
私は、ナギサちゃんに語って聞かせる。
失った期間に、何が起きたのか。もちろん、|あの日《・・・》を除いて。
意味はない。
どうせ、一日で忘れる。
でも、私が、耐えられない。
「ふふふ。妙な気分です」
「そう、だよね」
「恵巳さんって、そんなに話さないですよね。今日はいっぱい声を聞けて、嬉しいです」
「……うん。ありがとう」
何度も投げかけられた、言葉。
本心だと、叩きつけられた。
「すみません。恵巳さん。明日のあたしにも、話してくれますか?」
「……うん。絶対。喉が潰れても、伝えるよ」
心臓が張り裂けて、脳が蕩けそう。
ああ。
心の底から、思う。
私は今、生きてるんだ。