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改稿前原稿保管庫 第27話 忘れた【薔薇食む】

 なんで、私は死にたがりなんだろう。

 原因を、思案する。

 生まれながらの、無能だから。
 気弱だから。
 ガキだから。
 声が小さいから。
 ブスだから。

 星の数ほど浮かぶ。

 私には、必要とされている実感が、なかった。
 常に、裸で体育館に放置される気分だった。

 逆側を、見つめる。
 私の生きる喜びって、なに?

 ご飯は、好きじゃない。
 引きこもり時代、おにぎりにカミソリが、入ってた。
 男も嫌い。
 友達は、皆無。
 趣味も、仕事も、楽しくない。

 ただ、後悔しながら、生きてるだけ。

 でも、ナギサちゃんと出会って、感覚の全てが裏返った。

 お嬢様の一挙手一投足に、心を。
 声を聞くだけで、頬が緩む。
 温もりのある手料理が、大好きになった。

 ナギサちゃんとなら、私、ほがらかに笑える。

 じゃあ、ナギサちゃんは?

 薄命のお嬢様は、なぜ、私と一緒に死んでくれるの?
 最初から、考えないようにしてた。

 でも、早く聞かないといけない。

 今のナギサちゃんは、1日毎に、記憶を失う。
 眠るたびに、頭部から青薔薇が芽吹き、1か月分の彼女を吸い上げる。
 症状を分析できた時には、3か月前のナギサちゃんに逆行していた。

 でも、彼女は、変わらない。

 
「ねえ、ナギサちゃん、私のこと、どう思ってるの?」
「どうしたんですか? いきなり」
「聞いたことなかったなって」


 いつも、第一声で質問する。
 返ってくる答えも、録画みたいに同じだ。


「恵巳さんは、あたしのお花畑なんです」
「……うん」


 穏やかな口調に、お日様のような顔。


「ずっとそばにいたい。自分が死んだら、墓をたてて欲しいって思えるぐらい、落ち着くんです」


 脳がじんわりと温まり、涙ぐむ。


「昨日のナギサちゃんも、同じこと、言ってた」
「え、昨日……? あたし、言いましたっけ……」
「病気のせいで、忘れてるの」
「……え?」


 私は、説明する。
 ナギサちゃんは今、眠るたびに、記憶を失うこと。
 治療法もないから、自宅療養を告げられたこと。


「ふふふ。恵巳さんも、冗談が上手になりましたね」


 スマホとテレビを見せると、目の色が変わった。

 私は、ナギサちゃんに語って聞かせる。
 失った期間に、何が起きたのか。もちろん、|あの日《・・・》を除いて。
 
 意味はない。
 どうせ、一日で忘れる。
 でも、私が、耐えられない。


「ふふふ。妙な気分です」
「そう、だよね」
「恵巳さんって、そんなに話さないですよね。今日はいっぱい声を聞けて、嬉しいです」
「……うん。ありがとう」


 何度も投げかけられた、言葉。
 本心だと、叩きつけられた。


「すみません。恵巳さん。明日のあたしにも、話してくれますか?」
「……うん。絶対。喉が潰れても、伝えるよ」


 心臓が張り裂けて、脳が蕩けそう。

 ああ。
 心の底から、思う。

 私は今、生きてるんだ。

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