お久しぶり、でいいのでしょうか。
どうですか? あなたの表情が気になります。
信じていました。この手紙を探し出してくれるって。
あたしは今、あなたが生き延びる想像をしながら、筆を取っています。
まず、説明が必要ですね。
恵巳さんと、一緒に死にたい。
恵巳さんに、生きてほしい。
どちらも、本心なんです。
明確に自覚したきっかけは、赤い薔薇でした。
恵巳さんが、赤薔薇病を発症した瞬間。
もちろん、嬉しかったですよ。
あたしとお揃いになった、って。
同時に、胸にイバラが生えたみたいで、苦しかった。
矛盾を理解しても、あたしには選べなかったんです。
だから、あたしは神様に判断を委ねようと思いつきました。
海で入水心中して、一度だけ、引っ張り上げる。
筋肉はないし、成功する確率は、低い。
結果はどうでしたか?
すみません。
あたしの自己満足に付き合わせてしまって。
どっちにしろ、兎本ナギサは死にますから、許してください。
ふふふ。
絶命って、どんな感覚なんでしょうか。
想像すると、やっぱり嫌、ですね。
生まれた時から、自分の体が嫌いでした。
キレイすぎて、気色が悪い。常に、自分の持ち物とは違うという、拒絶感があったのです。
記憶はなくとも、感情は残っていました。
でも、恵巳さんと傷を共有して、変わったんです!!!
体に思い出が刻まれるたび、馴染んで、愛着が湧いて、考えるようになりました。
ああ。あたしの体を失いたくないなぁ、って。
ねえ、恵巳さん。
贈り物には、気づきましたか?
手向けの花束よりは寂しいですが、手に取ってもらえると嬉しいです。
赤い薔薇と、青い薔薇。
あたしたちを保存した、しおりです。
本当はもっと凝った装飾を施したかったのですが、旅先では、限界でした。
知っていますか?
薔薇の花束は、本数で意味が変わるんです。
1本では「ひと目ぼれ」。
2本で「この世界はふたりだけ」。
がんばれとか、生きてとか、無責任な言葉は伝えません。
ただ、ずっと口にできなかった言葉を記しますね。
あなたは、あたしの心を満たしてくれました。
一緒に過ごすだけで、心が温かくなって、呼吸が楽になるぐらい。
すごいですよね。
余命が縮んでも、後悔は一欠片も生まれなかったんです。
だから。
絶対に。
兎本ナギサは、鳥海恵巳を、愛しています
もし、おねだりを聞いてもらえるのなら、本を、書いてください。
あたしとあなたの物語。
きっと、誰にも理解されません。
でも、恵巳さんには生きる理由が必要だから。
文化祭の台本が、すごく好きだったんです。
文章も、お話も、迷いながら書き続ける、あなたの姿も。
世界を彩るには、あまりにも色あせた物語です。
でも、全力で死んだ証が、欲しい。
ふふふ。
今、絶対困った顔をしてますよね。
大丈夫ですよ。
嫌いになることはありませんから。
胸を張って、ペンを走らせてください。
最期に。
恵巳さん。
生まれてくれて、出会ってくれて、あたしは幸せでした。
バイバイ。
無機質な廊下の先で、また会いましょう。
あなただけの青薔薇より。
【後書き】
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
本作が明日の糧になりましたら、☆評価やレビュー、♡応援などをして頂けると嬉しいです。
また、一旦完結設定にせず、番外編の更新や改稿(表現や文章を整える程度)を進める予定です。