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第55話 「五臓六腑に詰め込んだ」(捕:買い取り価格)

 『指輪物語』序盤でビルボの111歳の誕生日の大宴会が描写されます。ホビットは大食漢で日に五回も食事を摂る(その一方でイザという時の耐乏性がある)という設定ですが、お腹いっぱいに食べた状態が原語では「filling up the corners」でした。瀬田訳では「五臓六腑に詰め込んだ」となっています。

 瀬田訳は今となっては古びた表現が多いのですが、「古代の書物を発見したので英語に翻訳して紹介しますよ」という体裁の物語としては寧ろ適切かつ味のある名訳と言える、とわたくしは思います。最新電子版の改訳も瀬田調が継承されておりますが、人名等の語尾の変更には慣れません…。

 黒毛猪や牛頭鬼の枝肉の組合買い取り価格はキロあたり大銅貨2枚くらい。食肉公社を経て宿の仕入れが大銅貨2.5枚。精肉は半分近くになるので大銅貨5枚弱。一食大銅貨1枚の食事にお肉が60g入って銅貨3枚。なかなか良心的な原価率ですが、宿泊客向けの特別価格なのと、人件費が安いため成り立っています。

 黒毛猪は豚と同じですので屠殺後12時間程度で死後硬直が最大になります。三人が食べたお肉は丸一日と少ししか経過しておらず硬い筈ですが、死後硬直前後のお肉はコリコリした歯応えで甘味を感じます(新鮮なお刺身と同じ)。わたくしたちは少なくとも5日程度経過して柔らかくなった豚肉を食べています。

J.R.R.トールキン『指輪物語』

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