よく「ケールはキャベツなどの原種」という解説を見かけますが正しい表現ではありません。原種は地中海地域原産のヤセイカンランで、早くからケールとキャベツ(結球しないもの)に品種改良されて利用されてきました。当初はどちらも薬用で、ケールは茎・キャベツは葉を利用することが多かったようです。
食用となったのはケールの方が古く、また結球キャベツの栽培化は中世期です。ケールの和名は緑葉甘藍、キャベツは甘藍または玉菜。玉菜は良いとして、ケールはキャベツと同時期に伝来して両者を区別するための命名ですので、神様の漢字翻訳でこれを使う訳にはいきませんでした。
ケールの語源は、ラテン語のcaulis「茎」→古ノルド語のkalです。寒い冬のある欧州ではケールは地面に葉を拡げる植物に変化したのですが、名前は「茎」のままという訳です。わたくしの世界では冬場に何度も葉を採取できるとことに価値があるという点を重視して「冬葉菜」の名を当てました。
ブロッコリーの栽培化は15世紀ごろ、その分化であるカリフラワーは更に後の時代ですが、わたくしの世界では、商業栽培化されていません。その代わりと言っては何ですが、玉葱は極早生種が存在して、秋植えで春先には収穫できる作物(春植えも可能で年中入手可能)と設定しています。
「ケールと根菜の煮込み」はオランダ伝統料理ブーレンコ-ル・スタムポット(Boerenkool stamppot)がモデル(現在はジャガイモですが伝統的にはパースニップを使います)。今のところ異世界のお料理のお味は…ですが、今後は主人公たちも美味しい食事に与りますし、自作もします。
そして三人が泊まる異世界最初の宿「踊る跳兎亭Prancing Hare INN」は『指輪物語』に登場するブリー村の宿屋「踊る子馬亭The Prancing Pony」のオマージュ。泊まれなかった高級宿「不動砦館Immovable Burg HOUSE」は『ハウルの動く城』の「動く城(moving-castle)」の捩りです。
J.R.R.トールキン『指輪物語』
D.W.ジョーンズ『ハウルの動く城』