我等世(ウィラルテ)の高級鉄鋼のうち玉鋼(たまはがね)は日本刀の材料である玉鋼、波鋼はダマスカス刀の材料であるダマスカス鋼に相当します。ダマスカス鋼は微小なカーバイド層が作り出す独特の模様が特徴ですが、硬くて粘り強く、かつ錆びにくいその性質の理由は長く謎に包まれていました。
現在では、その模様はバナジウムを含む鉄鉱石を使用することで、硬くて粘る性質は鋳鋼をルツボ内でゆっくり凝固させた上に結晶を壊さないように捏ねる程度に鍛錬することで、そして錆びにくいのはリンを添加してリン酸塩の被膜を作ることで実現した、と推測されているようです。
そしてダマスカス鋼は18世紀半ばを最後に作られなくなってしまうのですが、どうやら単純にインドのバナジウム鉄鉱山が枯渇したというのが真相のようです。しかし人類はダマスカス鋼を再現しようと研究する過程で、クロムを添加して錆び難くするステンレス鋼の発明に辿り着きました。
四協帝国でも、鉱人地域のバナジウム鉄鉱が枯渇したことを鉱人はひた隠しにしている一方で、帝国上層部(普人)は錆びない鋼鉄の開発を模索中です。高位砂魔術により既知の無機質を抽出できますので、クロムを化学的に単離できれば(地球では18世紀末)ステンレス鋼の発明まで遠くありません。
リン酸塩被膜処理は古代エジプトの鉄製品からも発掘されますが、これも技術が失われてしまい、再発見は19世紀後半ですので我等世でも知られていない設定。尚、インドの鉄鉱石はリンの含有も多く、ダマスカス鋼の秘密はバナジウムとリンが豊富という二重の偶然の産物だったようです。
また第33話近況ノートで解説済みですが、第六段階【属性剣】は第七砂魔術【硬化性付与】で作る「魔硝子剣」です。脆く欠け易いという欠点を魔法で解消し得る世界では、石製(魔素を通し易い二酸化珪素の巨大結晶)の剣が有用。魔素を流しながら戦える魔導師なら、魔硝子剣が最強です。
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