この物語も折り返し地点に入ります。
そう、邦画不況です。
日本特撮映画史は、そのまま日本映画史の栄枯盛衰と運命を共にしています。
昭和40年代は邦画不況の年であり、これは日本に限った事ではありませんが、アメリカでもテレビが30年代から興隆し、映画産業のライバルとなっていました。
この物語でも登場した70mmの大画面、立体音響などはまさにテレビでは味わえない迫力を提供するために生み出された技術でした。
日本の場合、洋画人気は衰える事がありませんでしたが、邦画は最盛期の昭和33年の11億人をピークに、昭和40年頭には3億人超にまで落ちていました。
現実の歴史の場合、最大のライバルはテレビであり、昭和40年代後半に日活、大映の様な老舗映画会社が倒産してしまいました。
異世界でも経済発展の行き詰まりが見えて来ての内乱となった訳ですが、今までイケイケだった世の中が停滞していきます。
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さて、知っている人にとって当たり前、知らない人にとってそれがどうした、の特撮ネタ解説です。
異世界内乱の中、リック君が避難先で見つけた現地の伝統芸、人形劇。
これを特撮でやってしまおうというかなりトンチキな考えですが、現実の世の中でそれをやってしまったのが、イギリスのジェリー・アンダーソン氏と、アーサー・プロビス氏。
ちなみにアンダーソン氏は一代限りの円卓の騎士として爵位を得ています。
この二人に加えもう一人のパートナー、レッジ・ヒル氏、この3人が一度立ち上げた映画会社が仕事がなくて潰れ、再起して興したのがAPフィルム。
その第一作が、事もあろうか、子供向け絵本を、更に子供向け人形劇にした「ジ・アドベンチャー・オブ・トゥイズル」。
ジェリー氏曰く子供相手の人形劇などやりたくなくて仕方がなかったが、生活のためにやったそうです。
この絵本の作家がロバータ・レイ。
1957年「ジ・アドベンチャー・オブ・トゥイズル」に続いて1959年「トーチー・ザ・バッテリーボーイ」もAPフィルムは半年分(その後半年続きますが別の会社が製作してます)を製作します。
幸か不幸か、この人形劇のキャリアが1960年「フォー・フェザー・フォール(邦題:ウエスタンマリオネット 魔法の拳銃)」以後のス-パーマリオネーション、目を左右に動かし、あらかじめ録音された音声に反応して電磁石が口を開閉させる、電動人形劇の時代を作る事になって行きます。
そしてかの有名な「サンダーバード」や、後年の「テラホークス」、更に「スペースプリシンクト」、日本では知名度は低いですが、ジェリー・アンダーソンが「テラホークス」の後番組に企画し挫折した「スペースポリス」の企画が十年以上越しで復活した実写特撮SFシリーズで、ここで人類と共に社会を築くエイリアンの造形まで長年を共にした偉大なるおばあちゃん、クリスティン・グランヴィル夫人。
ジェリーがその死を悼み永遠の友人と嘆いた作曲家のバリー・グレイともこの人形劇で出会ったのです。
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この異世界では、「トーチー・ザ・バッテリーボーイ」も、スーパーマリオネーション第一作の「フォー・フェザー・フォール」もすっ飛ばして、ルー・グレイド率いるITC社から出資を受け「スーパーカー」に突入してしまっています。
トーチー、テックス、ごめんなさい。
人形劇というものは、日本でも教育テレビなどで低年齢向け、幼児向けの番組であって、数千ポンドの大予算をかける大作ではありえませんでした。
それをやってしまったのがジェリーであり、それを認めてニューワールド(イギリスから見たアメリカその他新興地域)で稼いだのがルーでした。
元々ルー・グレイドはイギリスの貧相で窮屈なテレビ事情を理解した上で民放立ち上げの一番乗りを果たすためITPを創立しながら、結局は娯楽番組の強大な権限を持つITPを牽制したITA社との共同経営として、ATV創立で妥協せざるを得なかったのです。
…と言っても、日本とイギリスでは民放の在り方が全く違うので、この辺は私も正直よく理解できていません。
そしてITP、後のITCはアメリカをターゲットに、非イギリス的な番組を志し、有能な製作会社を買収し、世界的に有名な、パトリック・マクニー主演の「ジ・アベンジャーズ(邦題:おしゃれマル秘探偵)」、パトリック・マクグーハン主演の「デンジャーマン(秘密指令、秘密諜報員ジョンドレイク)」、「ザ・セイント」、そして世界では知名度が下がるもののカルト的な人気を得た「サンダーバード」等SF人形劇を世に送り出しました。
私はITC作品に詳しくないのでこの程度しか知りません。勉強不足。
スパイものは兎に角、SF人形劇の第一歩のその前にあったのが、「トゥイズル」であり、「トーチー」でありました。
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余談ですが、APフィルムのパートナー、アーサー・プロビスはジェリーと別の道を進む事で合意し、ロバータ・レイと人形劇を続けます。
日本ではNHKで放送された1962年「スペースパトロール」、あれは実はもう一つの「ファイアボールXL5」みたいなものでした。
後日本ではあまり知られていませんが、SFシリーズのパイロットフィルムとして1964年「ポール・スター」、1967年「ソーラーノーツ」(これは人形劇でなく俳優を使った作品)を製作しましたが、いずれもTVシリーズにはなっていません。
もしシリーズ化していたら、ジェリーのライバルとなっていたかもしれませんが、パイロット版を見る限り、「ちょっとなあ…」というか、ジェリー作品の圧倒的なパワーの前にはかすんで見えます。
やっぱり人形がコワイ。
その点、クリスティンおばあちゃんの人形たちは世界で愛されるだけの魅力があったのでしょう。
「サンダーバード」ファン、「ITCファン」??という人でもあまり彼女の名を意識する人は少ないとは思いますが、ある意味主演女優といってもいい方なんだろうな、と思います。