• に登録

ランキング巡回ログ #10 ~「無双しない転生譚」という面白さ~

思わず笑ってしまった。
転生作品なのに、この主人公はほとんど無双しない。


今日は、以前ランキング巡回で読んだ作品を紹介したい。
過去におすすめした作品について、一読者としての率直な感想を語ろうと思う。

『転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します』
https://kakuyomu.jp/works/822139840743206087

舞台は10世紀の北欧。
ヴァイキングが生きる厳しい世界だ。

主人公がはっきりと自我を持つのは5歳の頃。
そして最初に取り組むのが、なんと塩作りである。

凍結濃縮で濃い海水を作り、さらに清風炉を工夫することで、家庭レベルでの製塩を実現する。

普通ならここから知識チートで一気に成り上がる展開を想像する。
だが、この作品はそうならない。

なぜなら、この世界にはちゃんと「社会」があるからだ。

塩には既得権益があり、村の力関係もある。
それを理解しているからこそ、主人公は一足飛びに支配的な立場を狙わない。

代わりに清風炉を応用した床暖房など、生活の質を少しずつ改善しながら信頼を積み上げていく。

北欧の寒さ、海の厳しさ、ヴァイキング社会の力関係。
そうした過酷な世界の中で、主人公は少しずつ居場所を作っていく。


こうした「無双しない慎重さ」が、この作品の一番面白いところだと思う。

社会の仕組みや文化、価値観といった背景がしっかり作られている。
だからこそ、この世界が本当に存在しているように感じられる。

新しい技術を持ち込めば、必ず既存の利害関係と衝突する。
その「反作用」まで含めて描かれているのが、この作品の面白さだ。

こういう「世界がきちんと動いている作品」は、個人的にかなり好きだ。

主人公自身はただ村で平穏に暮らしたいだけ。
それでも工夫を重ねるたびに目立ち、望まずして影響力を持ち、結果として成り上がっていく。

一足飛びの革命ではなく、村単位の改善。
奇跡ではなく、積み上げ。
無双ではなく、信用。

こうした積み上げ型の成長が丁寧に描かれている点も、この作品の魅力だろう。
チートで一気に無双するのではなく、失敗や試行錯誤を重ねながら前に進んでいく。
そういう物語には、やはり強く惹かれる。


ただし、一つだけ気になる点もある。

この作者は前作『異世界コンサル株式会社』を700話以上書いたうえで、未完のまま更新が止まってしまっている。

本作も主人公は5歳から物語が始まり、現時点で100話を超えているが、まだ7歳の段階だ。
将来的には北方の征服王トールステイン大王にまで上り詰める物語らしく、かなり長い物語になりそうである。

それだけに、この壮大な物語が最後まで描かれるのか。
そこだけは少し気になっている。

もっとも、これは作品の出来とは別の話だ。
おすすめレビューもしっかり書かせてもらっている。もちろん☆3だ。
https://kakuyomu.jp/works/822139840743206087/reviews/822139845218909676

一足飛びのチート無双ではなく、社会の仕組みや人間関係の中で少しずつ信用を積み上げていく物語が好きな読者には、特におすすめできる作品だと思う。

ランキング巡回をしていると、こういう骨太な作品に出会うこともある。

さて、次はどんな作品に出会えるだろうか。
今日もまた、ランキング巡回の続きだ。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する