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ランキング巡回ログ #27 ~選択ではなく“導線”が先に見えてしまう違和感~

パーティー脱退という選択肢が思考に出てこない。
その一点が、どうしても引っかかった。


今日もランキングを巡回する。今回開いた作品はこちら。

『迷宮都市の石路〜その日暮らしの転生者〜』
https://kakuyomu.jp/works/2912051595259985810

主人公は、異世界のスラム街に転生した転生者・クロウ。
過酷な環境の中で生き延びるうちに精神的に擦り切れ、他人はもちろん、自分すら信用しない性格へと変化していく。

そんな彼が、生き延びるための力を求め、やがて失った倫理観を少しずつ取り戻していく――そういう物語だ。


ジャンルは異世界ファンタジー。
テンプレ的な転生無双とは距離を取り、スラムから這い上がるリアル寄りの成り上がり作品になっている。
この“地に足のついたリアルさ”は、個人的にはかなり好みだ。

序盤は特に良い。

スラムでの生存に必要な打算や警戒心が、そのまま主人公の思考として自然に落とし込まれている。
そこから力を得ていく流れにも無理がなく、「この世界で生きている感覚」はしっかりある。

パーティー加入の展開も丁寧だ。

リーダーは対人能力に優れるが戦闘力は平凡。
剣士は、このパーティーにいるのが不思議なほどに優秀。
さらに問題児も混ざり、前衛職が偏った不安定な構成になっている。

いわゆる“失敗する初期パーティー”を省略せず描いている点は、この作品の誠実さでもある。
この点も私は嫌いではない。
苦労の過程を省かない構成は、世界観のリアリティを補強している。


ただし、その丁寧さゆえに、ある一点で違和感が強く残った。

問題となるのは、問題児が他の実力者に絡んだ一件だ。
その結果として「決闘祭で負けた側が要求を一つ呑む」という形で、パーティー全体が巻き込まれる。

ここでリーダーはどうすべきか判断できず、剣士は将来や評価を考えて参加を選ぶ。

そして主人公は、状況を冷静に分析している。

相手には勝てない。
決闘祭は公開戦であり手札が晒される。リスクが高い。
ここまでは明確に理解している。

それでも――彼はパーティーを抜けようとしない。

この一点が引っかかる。

この時点の関係性であれば、最も合理的なのは脱退のはずだ。
信頼関係も十分とは言えず、義務や情もまだ強くは描かれていない。
むしろ、問題児から迷惑ばかり掛けられている。

それにもかかわらず、「抜ける」という選択肢が思考の中に現れない。
その結果として、決闘祭参加という“イベント”へと流れていく。

あらすじでは「失った倫理観を取り戻していく」とされている。
おそらくこの選択も、その過程の一部なのだろう。

しかし、ここで感じた違和感は単純な行動の不自然さではない。

主人公の性格から選択が生まれているのではなく、
あらかじめ用意されたイベントに合わせて行動が配置されているように見えてしまう点だ。

本来であれば、価値観、信頼関係、生存戦略。
こうした内面から「残る理由」が立ち上がるはずだ。

しかしこの場面では、その必然が見えないまま選択だけが進んでいる。
結果として、主人公の意思決定というより「決闘祭に入るための導線」に見えてしまう。

また、主人公の人物像も少し揺れている。

ヤサグレているようでいて、パーティーメンバーには意外と世話を焼く。
非情な合理主義者なのか、それとも情を捨てきれない人物なのか。
現時点では、その軸がまだ掴みきれない。

この“軸の曖昧さ”が、判断の不在と重なって違和感を強めているように感じた。


とはいえ、作品の方向性自体は悪くない。

スラムからの成り上がり、不完全な人間関係、倫理観の回復。
いわゆる骨太な異世界ファンタジーとしての素地はしっかりしている。
特に、パーティーという不安定な共同体を描く姿勢は好みだ。

ただ現時点では、キャラクターの意思よりも展開の必然が先に立っている印象がある。

まだ40話ほど。
個人的な評価は☆1だが、この評価は時にgoodではなく最低評価と誤解を与えるため、おすすめレビューは投稿しない。
ここから内面の掘り下げが進めば、評価は変わる可能性もある。

願わくば、プロットにキャラクターを当てはめるのではなく、キャラクターの必然から物語が動く形になってほしい。

さて、次はどんな作品に出会えるだろうか。
今日もまた、ランキング巡回の続きだ。

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