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ランキング巡回ログ #24 ~半導体黄金期をやり直す研究者の物語~

もし「人生をもう一度やり直せる」としたら、あなたは何を取り戻そうとするだろうか。


過去におすすめした作品の紹介が一段落したので、再びランキング巡回していきたい。
今回読んだのはこちら。

『五十六歳の研究者、中学生から人生をやり直す』
https://kakuyomu.jp/works/822139846264815481

主人公は五十六歳の半導体研究者・佐伯忠夫。
10年かけて完成させた論文を奪われ、すべてを失い、自ら命を絶つ。

しかし次に目を覚ますと、中学生の頃に戻っていた。

失意の人生をやり直すため、
「中学生からやり直す人生」が再び始まる。


ジャンルとしては歴史・時代・伝奇に分類されるが、“職業もの”としての側面が強い作品だ。

私はこの手の職業ものがかなり好きだが、少し面倒な読者でもある。
設定があるだけで進むタイプの作品だと、どうしても満足できない。

例えば異世界作品でも、薬師や錬金術師といった職業ものは多いが、工程が省略され「魔法で完成」と処理されると、途端に仕事の手触りが薄くなる。

テンポとしては正しいのだが、その“過程の説得力”が見えないと物語としての厚みが弱く感じられる。

私はこうした“過程の説得力”を重視するタイプで、
池井戸潤のように銀行組織の内部構造が想像できる物語や、
海堂尊のように医療現場の空気が感じられる作品に惹かれる。

その点で本作は、かなり手応えがある。

半導体という題材の中で、研究者の立場や環境が丁寧に積み上げられている。
定年間近の五十六歳でありながら大学の一研究者としてくすぶる姿や、成果が奪われる構造が、どこか現実の延長線上にありそうな生々しさだ。

だからこそ冒頭の「論文を奪われて自殺し、人生をやり直す」という展開に、単なる転生以上の重みが生まれている。

やり直しの舞台は半導体黄金期。
技術者たちの“ものづくりの熱気”に満ちていた、日本産業史の一時代だ。
本作は、そんな時代の中で未来の知識を持った主人公が、もう一度人生に向き合う物語である。


一方で、この手の作品は専門性が強く、読者を選ぶ側面もある。

ものづくりの話が丁寧に描かれる分、馴染みがないと少し距離を感じるかもしれない。専門的な話が続くと、「何を言っているのか分からない」と感じてしまう読者も出てくるだろう。

専門性を深めるほど説明は増え、テンポや読みやすさとのバランスは難しくなる。雰囲気として楽しめれば問題ないが、このあたりの受け取り方は読者によって分かれるだろう。

この作品が、「専門知識を持つ読者」に向けて書かれているのか。
それとも、「専門知識がない読者」にも楽しめるように書かれているのか。
この点にも注目しながら読み進めていきたい。

現時点ではまだ読み始めたばかりなので評価は保留としている。
読み終えたときに強くおすすめできると感じたなら、そのときに改めてレビューを書こうと思う。

おそらく、ものづくりの現場感を重視する作品が好きな読者には、かなり刺さる作品だと思う。


(追記)―――
最新話まで読破した結果、本作にはもうひとつ興味深い側面があることに気づいた。

それは“日本現代史もの”としての面白さだ。

主人公が中学生として戻るのは1982年。
日本の半導体産業が世界の頂点に立とうとしていた、いわば黄金期のはじまりである。

しかし1990年代以降、日本の半導体産業はアメリカとの貿易摩擦などを経て、長い衰退の時代に入っていく。

その栄光と凋落の歴史を知っている読者からすると、
「未来の知識を持った半導体研究者が、この時代をどう生きるのか」
という視点が本作のもう一つの軸として見えてくる。

この視点も踏まえて、おすすめレビューを書いた。
https://kakuyomu.jp/works/822139846264815481/reviews/2912051597295349701

専門的な場面も多く、読者を選ぶ部分はあるかもしれない。
それでも、この作品はおすすめしたい。期待も込めて☆3だ。
―――

派手な展開で押す物語ではない。
それでも、その時代の“ものづくりの熱気”と、人生をやり直すと決めた主人公の決意が重なり、気がつくと物語の熱量に引き込まれている。

ものづくりの現実を踏まえながら、もう一度人生と時代に向き合っていく。
そんな“職業もの”としての手触りが、この作品にはある。

こういう作品と出会えるから、ランキング巡回はやめられない。

さて、次はどんな作品に出会えるだろうか。
今日もまた、ランキング巡回の続きだ。

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