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ランキング巡回ログ #25 ~転生主人公。精神年齢は大人か子供か?~

男女比1:50の世界で、希少な男がダンジョンに潜る。
この設定だけ聞くといろいろと想像できて面白そうだ。
しかし読み進めるうちに、ひとつ気になる点が出てきた。

この主人公の精神年齢は、大人なのか、それとも子供なのか。


今日のランキング巡回は、気に入った世界観を描く作者の過去作を読んでみた。
今回読んだのはこちら。

『男女比1:50の世界に転生したけど、前世の感覚で普通に接してたら幼馴染も姉妹もお嬢様もみんな沼にハマっていった件 ~ロマンを求めてダンジョンに潜ります~』
https://kakuyomu.jp/works/822139844667780985

本作は、ランキング巡回ログ #9で紹介した心理カウンセリング作品の作者による過去作である。

物語は、前世の記憶を持ったまま転生した主人公が、男女比1:50の世界で生きるところから始まる。

この世界では、男性は希少な存在だ。
しかし主人公はその特別性を意識せず、周囲に対して「普通」に接する。
その結果、対等に扱われる経験のないヒロインたちは次第に惹かれ、恋愛感情へと傾いていく。

ここまでは、男女比崩壊系としては比較的よくある構造だ。
しかし本作のユニークな点は、この先にある。

それは主人公が、かなり早い段階から
「ダンジョン潜りてえなあ!」
と強く思っていることだ。

守られるべき希少な男でありながら、危険なダンジョンに自ら飛び込もうとする。
この“生活安定と危険志向のズレ”が、本作のもう一つの軸になっている。

ジャンルとしては現代ファンタジーだが、ラブコメ要素が強い作品だ。
作品タグを見ると、恋の沼にはまったヒロインたちによるヤンデレハーレム展開が想像される。
そこにダンジョン要素がどう絡むのか、興味を持って読み始めた。


ただし読んでいく中で、どうしても引っかかる部分が出てきた。

それが、精神年齢の扱いの曖昧さである。

転生作品では「前世基準か/現世基準か」はかなり重要な軸になる。

たとえば『無職転生』では、精神年齢は前世のままだ。
中身は35歳の無職男性であるため、周囲から見ると子供とは思えない奇妙な人物として描かれる。
幼馴染シルフィとの関係も、幼少期はどこか師弟関係のようであり、
ある意味でロリコン的な側面をあえて気持ち悪く描いている。

一方で『本好きの下剋上』では、精神年齢は現世寄りだ。
大学生の前世記憶はあるものの、精神性は子供として描かれる。
家族にわがままを言い、本を読みたい欲求を優先し、子供のように泣き、子供のように甘える。
そのため幼馴染ルッツとの関係も自然な子供同士の関係として成立している。

しかし本作では、その境界がやや曖昧だ。

会話内容は完全に大人のそれだ。
しかもヒロインの子供たちまで大人のような会話をする。
小学生のヒロインが東大の研究論文をダウンロードしてきて、専門用語を使って主人公と議論する場面まである。
さすがにここまで来ると、リアリティを感じにくい。

主人公のキャラクターも少しちぐはぐだ。
思考は大人のように論理的なのに、ヒロインの好意には気付かない典型的な鈍感系主人公。

極めて希少な男として認識しているにもかかわらず、
「ダンジョン潜りてえ」と言って、
死の危険がある場所への欲望にかなり素直だったりもする。

大人なのか、子供なのか。
論理的なのか、衝動的なのか。

結果として、
「どの精神年齢として見ればいいのか」が掴みにくい印象が残った。


さらに細かい違和感としては、ヒロインの多さとキャラの近似性がある。

成長段階ごとに関係者が増えていく構造だが、
性格の差がそこまで強く描き分けられていないため、やや混乱する場面もあった。

また、リアリティのずれも気になった。例えば剣道の描写だ。
主人公はヒロインから剣道を習うのだが、剣道の技は基本的に面・胴・小手・突きである。
つまり下半身への攻撃や防御は想定されておらず、実戦向きとは言い難い。
ダンジョンが存在する世界で、
「ダンジョンに備える武道」として剣道が選ばれるのは少し違和感があった。


結果として今回は、ダンジョン編に入る前の段階で読むのを止めてしまった。

理由を一つに絞るなら、
やはり精神年齢の曖昧さによるキャラクター像の不安定さが大きい。

ただしこれは作品の欠点というより、
「読者側の解釈軸と作品の設計が噛み合うかどうか」の問題でもある。
男女比崩壊系やヤンデレハーレム展開が好きな読者には、また違った見え方をする可能性は十分あるだろう。

ランキング作品だけでなく、気に入った作者の過去作を読んでみると、思わぬ作品に出会えることもある。

こういう読み方をしている読者も、きっと多いのではないだろうか。

さて、次はどんな作品に出会えるだろうか。
今日もまた、ランキング巡回の続きだ。

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