大切なものを
手放すことなく 抱きしめ続けた
半世紀にも及ぶような沈黙は
試練ではなく 大切な糧だったと知る
雷雨は わたしの前に立ちはだかって
試すためではなく
渡ることを助け 守ってくれた
もっと楽な道もあったのかもしれない
――けれど
これまでの歩みがあったから
いま この景色に辿り着いている
ただ
ひたすらに
愛おしい
夜が更けて ふと誰かの声が恋しくなる
今はその願いを胸の奥であたためながら
静かに朝を待つ
いつか その声が
耳に こころに 届く日を
胸を震わせる 振動が
鼓膜に 響く日を
昔しまった糸電話は
今も
静かに息をしている
そしてこれからも――
変わらず抱きしめ続けていく