※※ はじめに ※※
この小部屋を見つけてくださって、ありがとうございます。
こちらは、わたしがkou様の作品を読ませていただいたときの、感想などを綴っているお部屋です。
今回はこちらの作品です。
『雨の夜に、少女は魔女になる』 kou 様
https://kakuyomu.jp/works/2912051599483890296※※ 以下、ネタバレを含みます ※※
『雨の夜に、少女は魔女になる』は、すでに完結しておりますが
今回の【感想のお部屋】は、“初読の印象を書き留めた”「初読メモ」をもとにしながら綴っております。
今回の投稿は第4回目です。
よろしくお願いいたします。
◾️ 第7話 ミニスカートよりもずっと大胆で
雨宿りのために光希くんを家へ招いた恵理さんは、二人きりのリビングという近さに強く揺れながらも、ただのクラスメイトで終わりたくないと感じる。
軽く見られたくはない、でも女の子として意識してほしい――その矜持と恋心のあいだで、自分らしい一歩を選ぼうとする。そんな第7話。
⚫︎ 初読メモ 5月17日 記 (第7話 ミニスカートよりもずっと大胆で)
いよいよ、恵理さんのご自宅の中へと舞台が変わりました。
第6話までの、雨の中の相合傘、雷鳴、しがみついた腕。
玄関先で閉じられた光希くんの傘。
そこから、玄関を越えて「家の中」なんですね。
外にいる時は、雨と雷という非日常が、二人を近づけてくれていたけれど。
家の中に入った途端、そこは非日常ではなくて、恵理さんの日常そのもの。
光希くんは光希くんで、きっと相変わらず、雨宿りをさせてもらうだけのつもりで。
濡れた制服や、礼儀や、相手のお宅へお邪魔することへの遠慮を考えているのでしょうけれど。
恵理さんの中では、もうそれだけではなくなっちゃってます。
「佐京くんは、ここで、くつろいでいて。今、温かいものを淹れるから」
そう言って恵理はリビングを離れる。
キッチンに立った恵理は、ヤカンをIHヒーターにかけてスイッチを入れる。湯を沸かしながら、脱衣所の鏡の前で自分の顔を覗き込んだ。
(第7話より)
あら、ちょっと待って。恵理さん。
揚げ物ではないにしても、お湯を沸かしているそばから離れるとは、危ないぞ?
ガス火ではないIHヒーターだから“火”は使っていないようだけれど。
お湯が沸くまで時間がかかる。この時間をムダにはできなかった。女の子として意識してもらわないと恋も始まらないのだ。
彼女は二階の自室へ駆け上がると、クローゼットの前で恵理は激しい思考のラリーを繰り返し始める。
(第7話より)
あーあ。危ない。
……あれ。
もしかして、これって後々の伏線だったりするのでしょうか。
・お湯を沸かしたまま、恵理さんは二階へ行ってしまった。
・その間にお湯が沸いて、ヤカンが笛を吹く。
その音を、ひとり残された光希くんが聞いたら……?
「倉本さん?」
なんて声をかけながら、恐る恐るキッチンへ向かう姿が浮かんでしまいました。
火事にならないように、だからIHヒーターなのかしら。
それともわたしの知らない最新式だと、お湯が沸いたら勝手にIHが止まるとか、そんな賢い調理器具をお使いの倉本家なのでしょうか。
…などと、妙なところで現実的な心配をしてしまいました。
それにしても。
恵理さんの“部屋着”を選ぶシーンは、本当に恋する女の子のかわいらしさ全開でした。
ただの部屋着では、彼の中で自分はクラスメイトだ。かといって、あからさまに露出の多い格好は、安い女に見られるだけでなく、彼の誠実さに泥を塗るようで嫌だった。
(……軽い女に見られたいわけじゃない。でも、女の子なんだってことは、どうしても分からせたい)
彼女は淑女としての矜持を持っていた。誰にでも媚びるような、いい加減な女だと思われることだけは、死んでも避けたかった。
(第7話より)
ここから始まる恵理さんのコーディネイト術をじっくり読みました笑
恵理さん、ミニスカートもショートパンツも、人生の履ける“季節”にぜひ履いておきなさいな。と
結局ショートパンツを選ぶけれど、
次回予告のタイトルに「ニットカーディガン」ってある。
あれだ、あれだよ。
ショートパンツが隠れるくらいの大きいニットカーディガンで、
カーディガンしか着ていないみたいに見えちゃう着方、なのでは??
いろいろな音と熱が、家の中で重なりはじめた第7話でした。
『本日の魔女さんな一文』
ショートパンツという免罪符を使って取り払い、無防備を装って彼のパーソナルスペースに侵入する。
“無防備を装って彼のパーソナルスペースに侵入する”
第8話へ続く。
◾️ 第8話 ニットカーディガンで迫られて
光希くんに「ただのクラスメイト」ではなく女の子として見てほしい恵理さんは、自分らしいかわいさと矜持のあいだで作戦を練る。
けれど、膨らみすぎた想像に自分自身が振り回され、恋の熱がいよいよ止まらなくなっていく。そんな第8話。
⚫︎ 初読メモ 5月18日 記 (第8話 ニットカーディガンで迫られて)
きた!やはりの“オーバーサイズ”!
そして“萌え袖”!!
あぁ。これは、かわいい。
かわいいのです。
「守ってあげたくなるような脆さ」や「萌え袖」は、女の子だけの魔法ですからねぇ。
……なのですが。
恵理さん。
あなた、戦術を練る監督のような顔で、いったい何の作戦を立てているのですか。
いや、たしかに恋はある意味、作戦なのかもしれない。
好きな人に、少しでもかわいく見られたい。
いつもの「足の速い女子」ではなく、守ってあげたくなるような女の子として見てほしい。
その気持ちは、とても自然で、とてもかわいらしい。
でも、第8話の恵理さんは、そのかわいらしさの先へ、もうずいぶん遠くまで走ってしまっているように感じました。
さすが陸上部のエース。
心の中でも、加速がすごいです。
この『萌え袖』は、ずるいって分かってる。
(第8話より)
ええ。
ずるいです。
これは、ずるい。
ニットカーディガンのゆるさも、ミルクティー色も、萌え袖も、ココアのカップの持ち方も、全部ずるい。
ただし、この「ずるい」は、光希くんを惑わせるためのずるさというより。
恵理さん自身が、自分の中にある「女の子として見られたい」という願いを、どうにか形にしようとしている、少し切ないずるさにも感じました。
第3話で、恵理さんは「刺さる視線」に苦しんでいました。
自分を大切にしない視線にさらされることを、あれほど嫌がっていた。
それなのに今は、好きな人には見てほしい。
ただ見られるのではなく、光希くんにだけは、自分を女の子として意識してほしい。
この思春期の女の子の心の複雑さが、なんとも言えず、胸に残りました。
見られたくない。でも、見てほしい。
傷つけるような視線は嫌。でも、好きな人の心は揺らしたい。
うーーん。
恋する女の子の心って、本当に一筋縄ではいきませんね。
そして、ここからの恵理さんの脳内映画。
……ええと。
恵理さん。
いったんお水でも飲んで、落ち着きませんか?汗
これまでの恵理さんは、
「見てほしい」
「特別に思ってほしい」
「女の子として意識してほしい」
という願いを抱えていました。
でも第8話では、その願いが、恵理さんの頭の中でひとつの物語を作り始めてしまう。
現実の光希くんは、まだ一階で待っているはず。
ココアのお湯も沸かしている途中のはず。
雨宿りに来ただけの、いつもの光希くんのはず。
それなのに、恵理さんの中の“佐京くん”は、もう現実の光希くんから少し離れて、情熱的で、強引で……。
でも、その妄想の中の光希くんは、現実の光希くんとはずいぶん違う。
いつもは湖面のように静かな光希くん。
相手を傷つけないように、無色透明な優しさで接する光希くん。
その彼が、恵理さんの脳内では、だいぶ違う感じで育っちゃってますね。
けれど、ここで恵理さん自身も、ちゃんと現実に戻ってくるのですよね。
私は脳内で彼に何をさせてるのよ!
(第8話より)
この一文で、少しだけほっとしました。
恵理さんは、妄想に飲み込まれきっているわけではない。
自分の想像があまりにも自分に都合がよすぎることに、ちゃんと驚いている。
恥ずかしくなって、頬を叩いて、落ち着こうとしている。
そこが、まだ(?)かわいいです。
……いや、かわいいと言っていいのかしら。
ご本人は大混乱中なのですけれど。
でも、恵理さんが自分で自分に驚いているところに、まだ「少女」の部分が残っているように感じました。
魔女になっていく。
でも、完全な魔女ではない。
自分の中に生まれた熱に、本人が一番びっくりしている。
そこが、この第8話の恵理さんの切なさでもあり、かわいらしさでもあるのだと思います。
それにしても。
妄想という名の甘い猛毒。
(第8話より)
この言葉、すごいです。
甘い。
でも、毒。
この第8話の恵理さんに、ぴったりの言葉でした。
甘いのに、毒。
恋なのに、平穏をかき乱すもの。
第8話で、恵理さんの中の「かわいい魔女さん」は、もう少し深いところへ足を踏み入れてしまったように感じました。
最後に、ニットカーディガンを見つめ直して、恵理さんはまた作戦へ戻ります。
恵理さん。その作戦、本当に通じるのでしょうか。
次回タイトルは……。
いよいよタイトルが、もう逃げ場をなくしてきました。
『本日の魔女さんな一文』(妄想内の恵理さんが魔女すぎるので、今回はあえてかわいいところを拾いました)
「……落ち着け。落ち着け恵理……。私はアスリートよ。精神を統一するの。
吸って、吐いて……。……無理! 全然落ち着かない!!」
“無理! 全然落ち着かない!!”
第9話へ続く。
◾️ 第9話 むっつりスケベ魔女
ただ自分を少しかわいくしてあげるための“お守り”だったものが、光希くんを家に招いたことで、恵理さんの中では一気に特別な意味を持ち始める。
偶然が重なりすぎた状況に、恥ずかしさと期待がふくらみ、自分でも知らなかった恋の自意識が顔を出していく。そんな第9話。
⚫︎ 初読メモ 5月19日 記 (第9話 むっつりスケベ魔女)
タイトルが。
タイトルが、もう。
『むっつりスケベ魔女』。
……。
恵理さん。
いよいよ、作者様にここまで言われてしまいましたよ。
第8話の終わりで、次回タイトルを見た時点で、かなり覚悟はしていたのですが。
第9話は、着替えの場面から始まります。
ショートパンツ。
ニットカーディガン。
そして、下着。
……うん。
初読メモを書こうとしているわたしの指が、ここで少し止まりました。
ここを、どう受け止めたらいいのかしら、と。
けれど読み進めると、この第9話は、ただ恵理さんが色っぽい方向へ暴走していく回、というだけではなくて
恵理さんにとって、かなり大切な「お守り」だったのだと分かります。
普段の恵理なら、こんな「浮ついた」下着は選ばない。
(第9話より)
恵理さんにとって、下着はもともと、走るためのもの。
身体を支え、記録を出すためのもの。
アスリートとしての自分を守るための、機能的な装備。
それはそれで、とても恵理さんらしいです。
でも、響子さんと一緒にショップへ行き、淡い白のレースを勧められたことで、恵理さんは初めて、機能ではなく「かわいい」のために作られたものに触れる。
ここが、とても印象に残りました。
速いこと。
強いこと。
凛としていること。
陸上部のエースであること。
清楚なマドンナであること。
そんなふうに見られてきた恵理さんが、見えないところで、自分だけのかわいさを持つ。
それは、誰かを誘惑するためというよりも、まずは自分自身に、
「わたしも女の子でいていい」
と、そっと許してあげるような行為だったのかもしれません。
……などと、少し真面目に読み始めたところへ、響子さんです。
響子さん。
あなた、なかなか強い。
「勝負下着」という言葉に、全力で動揺する恵理さんがかわいらしくて。
トラックの上での「勝負」と、女の子としての「勝負」。
同じ勝負でも、恵理さんにとっては、まったく違う世界の言葉なのですよね。
そりゃあ、ゴール手前で足ももつれます。
そして、更衣室の回想。
ここが、わたしはとても好きでした。
女子たちに囲まれて、からかわれながらも、褒められて。
恥ずかしさが、少しずつ誇らしさへ変わっていく。
陸上の記録を褒められるのとは全く違う、一人の女の子としての自分を肯定される喜び。
(第9話より)
この一文で、あぁ、と思いました。
恵理さんが本当に欲しかったものは、ただ誰かを悩殺するための武器ではなかったのですね。
強い自分ではなく。
速い自分でもなく。
隙のない偶像でもなく。
ただ、かわいいものに心をときめかせる普通の少女として、
「似合うよ」
「かわいいよ」
と言われること。
それは、彼女の中に眠っていた女の子としての自信に、初めて光が当たるような出来事だったのだと思います。
響子さん、軽く見えて、ちゃんと素敵なお友だちなんだなぁ……とも感じました。
もちろん言葉の選び方は、かなり刺激的です。
恵理さんを全力でからかいます。
でもその奥には、いつも強くて完璧に見られている恵理さんへ、
「もっと普通に“かわいい”を楽しんでいいんだよ」
と背中を押してくれるような、女の子同士の明るさがありました。
この回想があるから、第9話の白いレースは、急に生々しいだけのものにはならない。
恵理さんが、自分の中のやわらかい部分を初めて大事にした記憶として見えてきます。
……なのですが。
今夜は、状況が違います。
その「お守り」を身につけている日に限って。
予報外れの雨。相合傘。雷。両親不在の家。
そして、階下には佐京光希くん。
……。
運気、上がりすぎなのでは?
恵理さんの言う「おまじない」は、どうやら、とんでもない強運を呼び寄せてしまったようです。
ここからの恵理さんの自意識が、もう大変です。
最初から計画していたわけではない。
ただ、自分の機嫌を取るために身につけていただけ。
でも、結果だけを見ると、まるでこの展開を予期していたかのように見えてしまう。
恵理さんは、そこで自分自身に慌てます。
うーーん。
本当はそんなつもりじゃなかった。
けれど、どこかで期待してしまっている自分もいる。
そういう自分を、恥ずかしいと思う。
けれど、完全には否定しきれない。
この揺れが、とても恵理さんらしいです。
第8話では、妄想という名の甘い猛毒を知ってしまった恵理さん。
第9話では、その毒が、今度は「自分はどう見られるのか」という自意識にまで染みていく。
見えないはずのもの。
誰にも知られないはずだったもの。
自分だけのお守りだったもの。
それが今夜、光希くんの存在によって、急に意味を変えてしまう。
物そのものは変わっていないのに、状況が変わるだけで、こんなにも心が騒いでしまうのですね。
そして最後。
「……今、この家には、私と佐京くんしかいない」
(第9話より)
ここで、初読のわたしも、少し息を止めました。
家という日常の場所が、恵理さんの意識の中では、どんどん特別な密室へ変わっていく。
恵理さんの中にいる「むっつりスケベ魔女」は、突然現れた別人格ではなくて。
清楚なマドンナとして、陸上部のエースとして、いつもちゃんとしてきた恵理さんの奥に、ずっと隠れていた普通の女の子の欲や憧れが、雨の夜に顔を出してしまったものなのかもしれません。
……恵理さん。
本当に、だいじょうぶ?
階下には、佐京光希くんがいますよ。
そしてたぶん、彼は何も知らずに、静かに待っていますよ。…ココアを。
その現実との距離が、次のお話でどうなるのか。
かなり、怖いです。
『本日の魔女さんな一文』
自分の知らない『むっつりスケベ魔女』が、薄い笑みを浮かべていた。
“『むっつりスケベ魔女』”
物語は、第10話へ続く。
魔女様が微笑み、恵理さんの妄想のお花が咲き乱れているところではありますが、第四楽章をここで終えることにいたしましょう。
では、また『感想のお部屋』でお会いいたしましょう👋
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
kou様へ
今回の第四楽章では、第7話から第9話までをまとめるにあたり、これまでより少し引用を絞って綴ってみました。
このあたりから、初読メモにも少し戸惑いが増えてきました。
第1話や第2話の頃は、「かわいい」「きゅん」「佐京光希くん、あなたって子は……」という気持ちで指が動いていたのですが、第7話以降は、恵理さんの想像力が勢いよく走り出していき、笑っていいのか、心配していいのか、読みながらこちらの感情もずいぶん忙しくなっていました。
でも、その戸惑いも含めて、連載を追っていた時の大切な記録なのだと思い、第9話・第四楽章まで書くことができました。
今回の【感想のお部屋】は、第七楽章くらいまで書く予定でいました。
ですが。
この「初読メモ」をもとにした『雨の夜に、少女は魔女になる』の【感想のお部屋】は、この第四楽章でレコードから針を上げさせていただこうと思います。
ここから先の物語は、恵理さんの内面の熱や身体感覚、そして「魔女」になっていく切実さがさらに深く濃くなっていきます。
初読時のわたしも、その熱量に、どこまでを言葉にしてよいのか、しばらく立ち止まってしまったのを覚えています。
ですので今回は、雨の相合傘から家の中へ入り、恵理さんの中で「少女の変身」が始まったところまでを、ひとつの区切りとして綴らせていただきました。
最終話まで追いかける形ではないのですが、この第四楽章まででも、わたしにとっては、雨音の中で恵理さんの恋が少しずつ形を変えていく、大切な記録になりました。
素敵な物語を読ませてくださり、ありがとうございます。
kouさんが、どんどん素敵な物語を生み出してくださるので、追いかけるのが本当に楽しいです。