※※ はじめに ※※
この小部屋を見つけてくださって、ありがとうございます。
こちらは、わたしがkou様の作品を読ませていただいたときの、感想などを綴っているお部屋です。
今回はこちらの作品です。
『雨の夜に、少女は魔女になる』 kou 様
https://kakuyomu.jp/works/2912051599483890296※※ 以下、ネタバレを含みます ※※
『雨の夜に、少女は魔女になる』は、すでに完結しております。
今回の【感想のお部屋】は、“初読の印象を書き留めた”「初読メモ」をもとにしながら綴っております。
今回は第3回目です。
わたしとしては、その時の“読み”に今読み返すと照れてしまうところもあるのですが、それも“初読みの妙”と広い心で受け止めていただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
◾️ 第5話 …と、その前に
(5月15日 記)
昨日の第4話を読み進める中で、「石部金吉」の文字に目が止まる。あ、れ?この言葉って。なんか見たことある、気がする。
………。
もしかして、kouさんの過去作では??と、よいしょよいしょと過去へ戻り、見つけましたよ!
「彼は石部金吉」(2024年3月26日更新)
第4話でのミニスカートの過去は、ここでのお話だったんですね。
“恋愛経験豊富(?)な友人・響子さん”に「色仕掛け」で迫るように背中を押されるお話。
この過去作品がまるで補足資料のように、わたしの中の倉本恵理さん像が、今回の『雨の夜に、少女は魔女になる』寄りに更新されました。
スカート丈を短くして迫ろうとした過去が、うまく繋ぎ合わせてくれる磁石になったというか。
はい、気づけて読めてよかったです。 「石部金吉」
と、昨日書けなかった金吉くんのことを書いたので、第5話の感想を綴ります。
第5話は、この作品のキャッチコピーの文言ですからね。楽しみです。
◾️ 第5話 一生消えない恋のシミ
触れたいと願った恵理さんの手は、光希くんの温もりには届かず、冷たい傘の柄に触れるだけで終わってしまう。それでも雷が生んだ一瞬の密着をきっかけに、恵理さんの中で「恋のシミ」を付けたいという切実な反撃が始まる。そんな第5話。
⚫︎ 初読メモ 5月15日 記 (第5話 一生消えない恋のシミ )
しかし、その鋭すぎる観察眼は、それが恋心による接近だとは露ほども思わない。彼はただ、恵理の筋肉が緊張し、呼吸が乱れたことを雨の冷たさによる強張りだと誤読したのだ。
光希は恵理が手を重ねようとした場所から、スッと自分の手をずらした。
(第5話より)
光希くん。
傘が低すぎた? とか、恵理さんの重心が自分の方へ傾いたとか
そんな微細なことに気づけるのに。なんで恵理さんの恋心に気づかないの??
卵50個と腱鞘炎になる犠牲と、ブタの貯金箱を賽銭箱に叩きつけて、意中の人のハートを掴むきっかけを作りそれを結婚への足がかりにした、あの陽子さんの息子だというのに。
あ、そうか。この“血”は佐京家のものなんだった。(佐京圭くん然り)
陽子さんのDNAがも少し強ければ…。
思い通りにならない。
(中略)
思い通りにならない。
(第5話より)
恵理さん。ま、魔女さまの片鱗が見えてきてますよ。
「思い通りにならない。」2回も漏れてますよ!
自分の魂を誰よりも正確に読み解いてくれる少年。
(ああ、もう……本当に、ダメだ)
恵理は心の中で、自分でも驚くほど深い溜息をついた。
彼が「みんな」と同じように自分を崇めないからこそ、彼女は「みんな」のうちの一人にはなりたくないと、強く、強く願ってしまうのだ。
特別な一人になりたい、と。
(第5話より)
うーーん。
うんうん。恵理さんわかるよ、恋するとそうなるよね。
でも。これって“恋”だけなのかな。
「自分の魂を誰よりも正確に読み解いてくれる少年。」というのが、ただの“恋”の枠には収まらない。深いです。
光希くんの目はいつだって「みんな」に優しい視線が注がれている。壊れかけている教卓にも、崩れた煉瓦にも。
“刺さらない彼の目”が「みんな」と違うからこそ、光希くんの目に映る「みんな」の一部では嫌なんだよね。
「君は特別だ」って思って欲しいんだよね。
だって、恵理さんにはすでに光希くんは「特別な場所の住人」(第2話)なんだもの。
恵理は、でもと思う。雨のお陰で今こうしていられることに、心の中で感謝した。
「佐京くんは、雨は嫌い?」
「いや、嫌いじゃないよ。雨の音って、ページをめくる音に似てないかな。規則正しいようでいて、少しずつリズムがズレていく感じとか」
光希の口からこぼれる比喩は、恵理の想像の範疇を軽々と飛び越えていく。彼は彼女の返答を待たず、まるで道端に咲く花を愛でるような純粋な好奇心で、夜の雨を楽しんでいるようだった。
「ページをめくる音……不思議なこと言うのね、佐京くんは」
(第5話より)
雨のおかげで、今こうしてふたりで一つの傘に入って、肩も触れそうな距離で歩いている。そんな雨に感謝もしていて、この時の恵理さんは「雨が好き」と思っている。
恵理さんの質問が「佐京くんは、雨は好き?」ではなく、「雨は嫌い?」なのが、とても素敵でした。
自分が好きだと思っているこの雨を、光希くんはどう感じているのだろうか。そんな女の子の心が透き通って見えました。
そして、光希くんがただの武術オタクではない、とわかるこの言葉。
なんと詩的で、なんと美しいのでしょうか。
恵理さんとの会話を通して、わたしも佐京光希くんがますます好きになりました。
――そこへ。雷鳴ですよ。
あら、恵理さん✨ しがみつくチャーンス!
などと。そんな下世話で低俗な心に一瞬なってしまったわたしをぶん殴ってください。
タイトルの「魔女」という言葉に、恵理さんがどこで変身するのかを、今か今かと探っていた、そんな汚れたわたしは雷鳴にあたればいい。と思いました…。
恵理さんには、小学生の頃、一人公園のあずまやに残されて、雷鳴とその爆音を聞いて動けなくなった、怖い経験があったのですね…。
目の前の大木が真っ二つに裂け、世界中の空気が破裂したかのような絶望的な爆音。どれだけ速く走れるようになっても、あの閃光からは逃げられない。光に追いつかれたら最後、自分は粉々に砕け散ってしまうのではないか。
そんな幼い頃の根源的な恐怖が、冷たい泥のように恵理の足元から這い上がり、心臓を締め上げる。
(第5話より)
陸上部のエース・恵理さんだからこその、「どれだけ速く走れるようになっても…」の表現が、とてもリアルに感じました。雷の、あの光と爆音は本当にすごいですから。
彼女の手は光希の濡れた制服の腕を、骨が浮き出るほど強く掴んでいた。その胸元に顔を埋め、固く目を閉じる。
(嫌だ、怖い。……独りにしないで)
(中略)
その時、自分の耳を覆うように、温かく、大きな掌が重なった。
「……心配しないで、倉本さん」
鼓膜を震わせていた不快な唸りが、彼の掌によって遮断される。
(第5話より)
またもや。光希くんの“掌”が救ってくれるんですよね。涙
すごく素敵な場面。素敵だからこそ、恵理さんの恋心が加速するからこそ。
彼の腕から伝わってくるのは、恵理が欲している恋慕ではなく、石像のような揺るぎなさと、どこまでも無色透明な優しさだった。
自分を女としてではなく、ただの守るべき対象として扱う光希。その、思い通りにならない清廉さが、恵理のプライドを粉々に砕きながら、同時に彼女を深い深い渇望へと突き落としていく。
(第5話より)
あぁぁ。こうやって魔女さまはお目覚めなさるんですね…。
雷鳴が怖かったのは本当。でもこれほどまでの身体的密着にも、彼には心を揺らすものではないという現実。
「必勝の上目遣い」って。それって、響子さんから借りた雑誌なのでは?
さぁ、マドンナ恵理さんの反撃の開始ですよ✨
今更ながら気づいたのですが。「恋の証」でも「恋の印」でもなく、「恋のシミ」
「シミ」、なんですよね。
例えば、
「やだ。今日は白い服を着てきたのに。
イカ墨のリゾットの魔力に抗えずに頼んじゃった。
馬鹿馬鹿。イカ墨がお洋服に飛んじゃったじゃない…」
という例文(?)のように
シミって、“取れない”“ついたら困る”ものだと思うんです。
ということは、むしろ恵理さんにしたら、「取れないでほしい」ってことなのかしらね。
そして次回のタイトル。不穏なんてものじゃない。
『満ち足りた家』ですか??
『本日の魔女さんな一文』
(……嫌だ。離したくない。このまま『ただのクラスメイト』として、帰したくない!)
(第5話より)
“……嫌だ。離したくない。”
第6話へ続く。
◾️ 第6話 殺したいほどにもどかしい
光希くんの腕にしがみつきながら、恵理さんは彼に女の子として意識してほしいと願うけれど、その想いはまたしても彼の清らかな誠実さにすり抜けてしまう。
それでも雨と雷に背中を押され、恵理さんは「もう少し一緒にいたい」という気持ちのまま、光希くんを恵理さんの家での雨宿りへ誘う。そんな第6話。
⚫︎ 初読メモ 5月16日 記 (第6話 殺したいほどにもどかしい )
話タイトルが、物騒…。恵理さんにとっては、もどかしいシチュエーションではありますよね。
初読メモとして、書き進めているわけですが。
(……っ。恥ずかしい、死ぬ。死んじゃう。……でも、これなら!)
(第6話より)
…それは初読メモを残そうとしてるわたしのセリフですよ、恵理さん。
少しでも光希くんとの距離を縮めたくて、腕組みと見せかけて物理的距離を近づける恵理さんですが、光希くんには
打撃から密着状態に移行し、そこからの投げ技や関節技を想定したら、これくらい僕がしっかり支えられなきゃいけないって、改めて確信したよ。もっと楽に身を預けていいから」
(……ち、違う。そうじゃない。そうじゃないのよ、佐京くん……!!)
(第6話より)
……すべてが“鍛錬”へと繋がる光希くん。
頭の中は武術のことだけなのだろうか。
お話が進むにつれ、
第2話では、光希くんが恵理さんの掌を包み、
第4話では、恵理さんが手を重ねたくなり、
第5話では、雷をきっかけに腕を掴み、
第6話では、その腕に掴まったまま歩く。
「手」から「腕」へ、距離が近づいています。
でも、恵理さんは(擬似)恋人のような距離を感じているけれど、光希くんは“守る、支える、観察する”という距離。受け取りの意味が全然違うんですよね。
まさに話タイトル、そのものですね。
あまりにも好きで、でもあまりにも噛み合わなくて。
どうしていいのかわからない“もどかしさ”
そのすれ違いが読者にとってはとてもコミカルなのに、恵理さんにとってはとても切実で。
物騒な話タイトルながらも、ぴったりな回でした。
光希くんに恵理さんの家へ送ってもらってるんだから、当たり前なんだけど、時間の経過とともに恵理さんの家に着いてしまいます。
(……帰りたくないな。もっと、佐京くんと一緒にいたい)
(第6話より)
と思いつつも、そこで解散。「相合傘の素敵な思い出」で胸に秘めるところ。
で、完結してもいいところ…。
でも、今回のお話のタイトルは『雨の夜に、少女は魔女になる』
“かわいいだけのお話”では終わりません、よね?笑
あーあ、両親もいない自宅に男の子を誘ってしまうなんて。
あ、失言。“雨宿り”でしたよね笑
(……よし、作戦成功!)
彼が恵理を女の子として意識してくれないなら、今日、この家の中で、もっと自分のことを知ってもらえばいい。光希のその真っ白な優しさに、恵理の「好き」っていう気持ちを、少しずつ馴染ませていけばいいんだから。
(第6話より)
えーとえーと。“馴染ませる”??
相当、不穏ですけど。
次回はいよいよ、恵理さんのご自宅の中かしら。
「少しだけお邪魔してもいいかな?」と言ってたから、光希くんもお家の中に入るのよね。
んー。どうなんだろう。光希くんのことだから、靴も脱がずに玄関に立ち尽くしてたりして。
もちろん、玄関のドアを少し開けてたり。
どちらにしても、外の雨から家の中へ舞台が移りますね。
『佐京光希くんと相合傘で歩く』という非日常から、恵理さんの「ココア、淹れるね!」という日常の場所へ移行していく。
さぁ、魔女さまが本格的にお目覚めされるのでしょうか。
『本日の魔女さんな一文』
(……ズルい。私だけが、こんなに自分を見失いそうになってるのに)
(第6話より)
“こんなに自分を見失いそうになってるのに”
第7話へ続く。
恵理さんご自宅の、玄関ドアが開いたその先が気になりますが、第三楽章は玄関先で閉じる傘とともに終わりにいたしましょう。
では、また『感想のお部屋』〜 その夜ごとの雨音 第四楽章〜でお会いいたしましょう👋
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
kou様へ
【感想のお部屋】へのコメントをいただき、大変にありがとうございます。
特に今回の「初読メモ」を基準にした感想へのコメントをいただいた時、
その段階での作者様のお気持ちもお聞きすることができ、
「これって。Blu-rayになった大好きな作品の、監督コメンタリーでは? なんと贅沢!」と、作者様解説を楽しく読ませていただきました。
わたしは恵理さんのような、雷鳴で怖い思いをしたことがないのですが、雷鳴&大雨に間一髪で当たらずに済んだことがあります。もしそばに佐京光希くんがいたら、「きゃっ」ってやってみたかったです笑
第5話くらいまでは、初読メモは快調に指が動いていたのを覚えています。
が。第6話に至り、「彼女はさらに一歩踏み込み、〜」の辺りから
あ、れ? これは……。
ナナさんのところのタイトルほどではないので、安心して初読メモなんて始めちゃったけれど、今後、“ナナってる”方向へ行かないん、だよね??汗
と、思い始めていた頃です笑
前回の【感想のお部屋】で「2話で、(中略)5話で恵理の家に着くことになるとは思わなかったものです。」と書かれていたので、作者様としても、恵理さんがあそこまで脳内暴走するとは想像されていなかったのでしょうね。
kouさんが言葉で、時々、「キャラクターを今後こんな場面で登場させたいと考えている」をお聞きするのがとても楽しいです。
・五十嵐先生が健司さんのところへ訪問。
・健司さんが体調が安定されてから、職場復帰した時の佐京圭くんと虎谷結衣さんの元気な様子。
・一ノ瀬雫さんの出張サービス。
このエピソード、待ってます。と催促をするわけではなくて。
まだ作品として投稿されていないものの。プロットを垣間見たようで、なんだかとてもわくわくします。
kouさん作品のクロスオーバーがとても楽しいので、どこでどんなキャラがすれ違うのか。
わたしも少しずつ過去作を読んで、世界観を広げていきたいと思います。
6月9日からの『茜さす台所にて』の連載が開始され、素敵なお話を読むことができ嬉しいです。ありがとうございます。
弥生ねえさまのお話であり、お料理の丁寧な描写もあって、毎日楽しみに読ませていただいております。
また、コメント返信にて、以前のわたしの近況ノートのことにも触れていただき、あの小さな台所の時間が、どこかでこの作品へとつながっていたのだと知り、胸がいっぱいになりました。
“推し”ている作家様の創作の火種に、ほんの少しでも自分の言葉が触れていたのだと思うと、嬉しさと恐縮で、しばらく言葉が出ませんでした。
こちらこそ、あの小さな台所の時間を、こんなにも丁寧な物語へとつなげてくださり、本当に本当にありがとうございます。
これからも、弥生さんの台所に灯る時間を、大切に読ませていただきます。