読者の皆様、作者の皆様、ごきげんよう!
『自由のアリア』トップオタ兼作者のカラノニジです!
さてさて、前回の一人称へのこだわりとストレスの共有の続きになります!
今回は、記念すべき本編第1話の冒頭について、ガッツリ深掘りしていこうと思います!
皆様、第1話の冒頭を覚えていますでしょうか?
覚えてない人は今から読みにいってください。
いやまあ、ここに書くんですけど。
空を飛べば、どこへでも行けるのだろうか。
高いところでは、声はよく響くのだろうか。
どれだけ重みを削れば、浮かべるだろうか。
地を蹴ることもなく、何にも引かれずに。
そうやって最後に残ったものを自由と呼ぶのなら、
それはあまりにも軽くて、どこに向かうのかさえ、わからなかった。
なんとも芳しい匂いのする。
……なんというか、フワッとしていて掴みどころのないポエムですよね(自分で言うな)。
宙に浮かんでいるような感覚。語り手不明。
「自由ってなんだろう」というこの作品の根幹テーマに触れつつ、まずは読者の皆様の意識を『空』へと向けてもらいました 。
そして、物語のカメラはこう続きます。
ここはアニュラス大陸の北方の大国、イドリア帝国。
空から、眼下に広がる世界(アニュラス大陸)へ。
そこから北方の国(イドリア帝国)へ 。
さらにカメラは下りていき、国境のガリア山脈、麓のファルメルの街、ギルドやら鉱石処理施設、ひしめき合う建物、そしてそこを行き交う住人たちへと、どんどんフォーカスを絞っていきます 。
これ、映画やアニメの冒頭でよくある、空からカメラがファンタジー世界をズームしていく演出を強烈に意識して配置しました!
気がつきましたか?気がついていないでしょう!?
気がついていなければ私の演出不足です!!
そして、カメラが最後に一人の銀髪の女を捉え、彼女の第一声が発せられます。
「チッ…クソ寒い…」
ここで、カメラがぐいっとパンして、彼女の顔のアップがどーーん!!です。
空→世界→国→山→街→建物→人→アリア
この順に限界まで近づいていき、「寒い」という生々しい感覚の言葉を発した瞬間、語り手不明の三人称から読者の意識がアリアの視点に憑依(ぐいっとパンしてどーん)する。
つまり読者を意識を主人公アリアに下ろす降霊術です。
そんなイメージでこの冒頭を書き上げました!
そして、無事にアリアに憑依した読者の皆様は、そこから彼女の脳内で垂れ流される思考(愚痴)を延々と聞かされることになります 。
「ああ、アリアってこういう風に思考を垂れ流す口の悪い人物なんだな」と理解しつつ、彼女の思考に同調していく。
思考がわかっているアリアに理不尽が降りかかれば、読者もそのストレスに強く共感できるはずです。
もし、私がこの想定どおりに、しっかり読者の皆様をアリアに感情移入させられていたとしたら……。
もしかすれば、巨大な〈鐵喰い〉との死闘で岩の礫を浴びたとき、自分の右足が砕けたような「痛み」を感じたかもしれません 。
ガロードに〈バアルスフィア〉をブッパなされたとき、圧縮された空気を受け、一緒に「息が苦しく」なったかもしれません 。
そうでなければ、私の筆力にはまだ洗練の余地があるということでしょうね。
第一章において読者が獲得できる情報は、「アリアの思考と常識」というフィルターを通して得られるものが中心です。
逆に言えば、アリアが興味を持たない物や、彼女にとって常識過ぎてわざわざ思考を巡らせないものは説明できません。不自然な説明台詞や状況説明(インフォダンプ)を廃するのも感情移入には重要だと思います。
長編ファンタジーの第一章としては、どうしてもこの辺りのトレードオフが難しかったですね……。
……どうか皆様、これからもこの物語を読み進めてください。
いつか必ず、アリアちゃんが、あるいは他のキャラクターたちが。
圧倒的な『感情移入』で、あなたを殺しに行きますから。
それでは皆様、引き続き『自由のアリア』をよろしくお願いいたします!
