読者の皆様、作者の皆様、ごきげんよう!
『自由のアリア』トップオタ兼作者のカラノニジです!
今回は魔法の〈詠唱〉について!!
魔法使いが長々と呪文を唱えて、最後に魔法名を叫ぶアレです。
長ければ長いほど格好いい。
難しい漢字を使えば使うほど強そう。
意味はよく分からんが、とにかく右腕が疼く。
義務教育で履修した方も多いのではないでしょうか。
さて、ここで一つ。
魔法を使うために呪文が必要なら、魔物はどうして魔法を使えるのでしょうか?
彼ら、詠唱してませんよね?
唸ったり吠えたりはしていますが、急に流暢な古代語でポエムを読み上げたりはしません。
「グルルル……」の字幕をオンにしたら、『滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器……』とか詠唱文が画面下にびっしり出ているのでしょうか。
嫌ですね。
戦闘中に読めねぇよ。
実は、この世界、アニュラスの魔法は、詠唱そのものが必須ではありません。
無詠唱があるんだから、まあそりゃそうなんですが。
では、そもそも魔法使いたちは何のために喋っているのか?
魔法の詠唱とは、イメージを固めるためのものです。
必要な属性適性や魔力があることを前提に、どんな現象を起こしたいのかを、術者が明確に思い描く。
その手助けをしているのが、言葉なのです。
中でも、魔法名は〈ショートカットキー〉のようなもの。
炎を生み出して、球状にまとめて、狙った方向へ飛ばす。
そうした一連のイメージを、〈ファイアボール〉という短い言葉に結び付けておく。
毎回、頭の中で最初から全部組み立てる代わりに、魔法名を唱えることで、使い慣れたイメージを呼び出すわけですね。
よく使う機能はショートカット登録!
急にパソコン教室になりました。
なので、火を出す魔法の名前は、別に〈ファイアボール〉でなくても構いません。
〈メラミ〉でも!
〈PKファイア〉でも!
〈ファイアフラワー〉でも!
……こほん。
術者の中で、その言葉と「火球を出す」というイメージが、きちんと結び付いていれば成立します。
極論〈ウォーターボール〉と唱えて、火球を出すこともできます。
「今のはファイアボールではない……ウォーターボールだ」
水とは。お前のような水魔法があるか。
そんな風に頭で考えてしまったら使えません。
逆転クオリアってやつですかね?違う気がします。
本人の頭の中で〈ウォーターボール〉が火球のショートカットになっているなら、それでいいんです。
世界が魔法名を聞いて、「ウォーターですね、800円です!」と注文を処理しているわけではありません。
注文を受けているのも、作っているのも、術者本人です。
本人の中で正しいイメージを呼び出せるなら、何と呼ぶかは自由。
ただし、それを他人に教える時、めちゃくちゃ面倒くさいと思います。
だから無詠唱のように頭の中だけで、そのイメージを十分に固められるなら、言葉にしなくても魔法は使えます。
魔法名を口に出して呼び出す手順まで、省略してしまうわけですね。
ですが、人間は、思っていることを言葉にした方が、はっきり整理できることがあります。
脳内では完璧だった説明が、いざ口に出してみると、
「あれ? 何言ってんだ私?」
となった経験、ありませんか。
私はあります。今も若干そうです。
頭の中で分かっているつもりでも、形にしてみると曖昧なところが見えてくる。
言葉にすることで、意識を一つのイメージへ向けやすくもなる。
そのため、基本的には、無詠唱よりも魔法名を口に出した方が威力を高めやすい。
さらに、魔法名だけの〈略式詠唱〉から、長い〈完全詠唱〉になると、何が変わるのか。
今度は、これから起こす魔法について、もっと詳しく説明し始めます。
どんな形にするのか、どのくらいの規模でか。
どう動かして、何に作用して、どんな結果をもたらすのか。
そうした内容を、言葉を紡ぎながら、より具体的に組み上げていく。
つまり完全詠唱は、
「これから私はこういう魔法を使います。作用はこうで、結果はこうです」
という、魔法のプレゼンでもあるわけです。
詠唱中の魔法使い、脳内でスライドをめくっている説。
聞いているのも本人ですが。
この説明によって、自分が起こそうとしている現象を、細部まで明確にしていく。
だから威力を高めたり、精度を増したりできる。
儀式的な手順として時間や手間をかけることにもなりますが、文字数に応じてダメージが加算されるわけではありません。
「あと二千文字盛れば倒せる!」
とかはありません。
「詠唱文字数が魔法の威力に影響する世界で卒論詠唱したら魔王を倒せちゃいました!?」
……面白そう。
最終回で「ここまで綴ってきた呍万字が俺の詠唱だああああ!!」
みたいなの。面白そう。……そうか?
ということで、今回のタイトル。
早口オタクは最強の魔法使いになれるのか?
半分は、そう。
半分は、そうでもありません。
イメージをきちんと組み立てながら、必要な詠唱を速く済ませられるなら、それは有利です。
ですが、口だけ速くても、肝心のイメージが追いついていなければ意味がない。
推しについて一分間に二千文字語れることと、火球を正確に制御できることは、別の技能です。
悲しいなぁ……。
我々に必要だったのは、滑舌だけではなかった。
逆に、頭の中だけで極めて明確にイメージできるなら、長い説明を省いても魔法は成立する。
無詠唱、略式詠唱、完全詠唱。
単純に「上位互換を覚えたら、前の技は忘れていい」という関係ではないんですね。
技スロットを空けるのは、ちょっと待ってください。
というわけで、次回は個人のイメージならなんで詠唱の文言が決まってんの?です。
それでは皆様、引き続き『自由のアリア』をよろしくお願いいたします!
*イラストは生成AIを利用しています。
ガロードの私服……!自分で描かなくてもファンアートが供給されるのがAIのいい所ですね。
