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第三十二回【世界観設定】人工太陽と魔紋認証「人工太陽のアップデートに失敗しました」

読者の皆様、作者の皆様、ごきげんよう!
『自由のアリア』トップオタ兼作者のカラノニジです!


まずは、報告させてください。
この度、『自由のアリア』がカクヨム、小説家になろうの両プラットフォームで10,000PVを達成しました!!

合計で20.0Kです!!
この場を借りて皆様にお礼申し上げます!!
ありがとうございますありがとうございますありがとうございます。


では本題!!

皆様、第二十二回の近況ノートを覚えていらっしゃるでしょうか。

イドリア帝国は寒いので、太陽を作りました!
という、発想のスケールがおかしい国のお話でした。

その時に、人工太陽を改良しようとして失敗した過去があり、そこから〈魔紋認証〉が開発された……というところで、私はこう言っています。

「その辺は、また今度」

十回経ちました。

「また今度」って便利な言葉ですよね。
期限が書いてない。

……今回は逃げません。宿題を一つ減らします!

というわけで、今回は人工太陽〈モノ・ソル〉の、やらかした方の歴史です。
またしても本編では出ない裏設定でございますね。

まずは少しおさらい。

イドリア帝国の人工太陽は、首都〈エテル・イドリア〉を中心に国土を暖める巨大魔導装置です。
現在使われているのは、三号機の〈モノ・ソル・ミナ〉。
……三号機だって話はしたよね?したはずだ!

首都周辺は暖かい。
離れるほど寒い。
国土の外周部まで行くと、極寒。

第一話から寒さにキレていたアリアちゃんとしては、もう少し辺境まで暖房を効かせてほしいところです。

実際、過去のイドリア帝国も、そこを何とかしようとしました。
素人が思い付くことは大抵既に誰かが試してるもんなんですよね。
首都だけでなく、国全体を暖められたら?
もっと広い土地で、人が暮らせるようになったら?

こうして改修されたのが、二号機〈モノ・ソル・イドラ〉です。
えー、舞台設定から422年前。聖歴576年……。

初出ですが、アニュラスの1000年の歴史。年表が設定集に存在しています。
……はい、またいずれ。


改修を終えたこの装置は、イドリア帝国全土を暖めることに成功しました。

成功してるんですよ。

最初から動かなかったわけでも、起動した瞬間に爆発したわけでもありません。
ちゃんと、目指していたことはできたのです。

やったぜ。

……その二年後でした。
一時モノ・ソルを停止しなければならないほどの国家存亡の危機が起きました。

ここで、人工太陽がどうやって遠くの土地を暖めているのか、少しだけ説明します。

〈モノ・ソル〉は、空に浮かぶ巨大な焚き火のように、ただ熱を放っているわけではありません。
もし、そうなら首都は燃えカスになっていることでしょう……。
実は大気中の魔力に作用する〈魔力伝導路〉を通じて、国土の寒さを和らげています。

火ではなくてめちゃくちゃ長い電熱線みたいな感じでしょうか?
あんなに遠くにあるのに暖かい!
魔法って便利ですね!

ですが、大気中の魔力を使っているのは、人間だけではありませんでした。

ここで登場するのが、風属性の魔物〈エアラヴァ〉。
つむじ風のような不定形の妖精のようなものでしょうか。
危険度はFランク。基本的に無害ですが数は多いタイプ……。

国家存亡の危機を語る流れで出てくるには、ずいぶん控えめなアルファベットですね。
ドラゴンとか、古代の邪神とか、その辺が出てくると思ったでしょう?

このエアラヴァたちは、空気中の魔力を伝えて、仲間同士で交信する性質を持っていました。

ところが。
〈モノ・ソル・イドラ〉の魔力伝導路と、エアラヴァたちの交信が干渉してしまいました。
人間が魔力伝導路を使って魔力ヒーターを作っている横で、彼らは彼らで、同じ伝導路を使って言葉のやり取りしていたわけです。

いわゆるプラチナバンドの食い合いが発生したのです。

その結果、人工太陽の動力源である、大巨竜の魔石の魔力が逆流。
イドリア帝国内のエアラヴァが、一斉に活性化してしまったのです。

たとえるなら、魔物たちのグループ通話に、国家規模の電源が接続されてきたようなものです。
誰だよ、このグループに太陽を招待したの。

しかも、動力源はほぼ無尽蔵の大巨竜の魔石。
そこらの魔物に渡していい量の魔力ではありません。

聖歴578年。
こうして発生したのが、国土全域に及ぶスタンピード。

〈ストームブリンガー〉です。

名前は格好いい。
この事故で、〈モノ・ソル・イドラ〉は一時的に機能を停止しました。

……さて。
イドリア帝国って、何で人が暮らせるようになった国でしたっけ。

太陽があるからですね。
その太陽が止まりました。
もうおわりだよこのくに。

魔物による被害に加え、寒さが人々と農作物を襲います。
翌年には飢饉が発生し、ガルドア王国から食料援助を受けるため、国境を開放する事態になりました。
その際には、黒鉄鉱山ブラックロックマウンテンの採掘権の一部を割譲することにもなっています。
これが後々、争いの種として残り続けて……(略。

暖房の修理代だけでは済まなかった。
国の食料事情も、他国との関係も、巻き込む大事故です。
だからといって、「危ないので人工太陽は廃止します」とも言えません。
それがないと、この国では生きていけない。

スマホの更新に失敗したので、しばらく古い端末を使います。
……くらいの話であってほしかった。
二号機は翌579年に再稼働しますが、もちろん、同じ事故を繰り返すわけにもいかない。
そこで開発が進められたのが、今回もう一つの主役。

〈魔紋認証〉です!

第二章で、アリアちゃんたちがパーティ登録をした時にも出てきましたね。
あの、本人確認に使われている技術です。

ここでいう〈魔紋〉とは、個人に固有の魔力の波長のこと。
ざっくり言えば、魔力の指紋のようなものです。

指先に模様があるように、魔力にも、その持ち主を識別できる特徴がある。
その違いを見分ける技術を、装置の制御に使うわけですね。

〈モノ・ソル〉では、この魔紋認証による制御を取り入れることで、エアラヴァの交信回線との分離に成功し、干渉や魔力の逆流を防ぎました。


「私はエアラヴァではありません」にチェックを入れたら接続できる、みたいな仕組みではありません。


そして聖歴581年。
この技術を組み込んだ三号機〈モノ・ソル・ミナ〉が稼働します。神アプデキター!

現在、アリアちゃんたちの暮らすイドリアを暖めているのは、この三号機です。

前回のイドリア紹介では、さらっと「ver3.0」と書きましたが。
途中のバージョン履歴には、国が傾くような事故が挟まっていたんですね。

更新内容:
・魔物との意図しない干渉を修正しました。
・魔力の逆流を防ぐ機能を追加しました。
・制御の安定性を向上させました。

そして、魔力の違いを識別できるなら、人の魔力を照合して、本人かどうかを確かめることにも使える。
現在の〈冒険者プレート〉には、そうした技術が転用されているわけですね。

国を暖める太陽の安全対策と、冒険者が持ち歩く身分証。
大きさも用途も全然違いますが、技術の歴史を辿るとつながっているのです。

ただし、第二十回でも触れた通り、分かるのは「登録した魔力の持ち主と、目の前の人が同じかどうか」です。
本名まで勝手に調べてくれるわけではありません。

受付「本人ですか?」
魔紋認証「本人です」
受付「本名ですか?」
魔紋認証「……そこまでは担当してません」

仕事の範囲は、ちゃんと決まっている。
太陽の暴走は防いでくれても、登録用紙に何と書いたかまでは面倒を見てくれないんですね。

アリアちゃん。
辺境まで暖房を効かせろと言いたくなる気持ちは分かりますが。

その要望、過去に一度通って、この有様です。

それでは皆様、引き続き『自由のアリア』をよろしくお願いいたします!

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