カクヨムコンテンスト11にご参加されるみなさま、進捗いかがでしょうか? 私も気合を入れて読ませていただくべく、眼鏡を新しくするつもりでおりますよ。ええ、主な理由は年波への抗いですけれどもね。
 今月は恋愛ジャンルから料理ものへ注目し、選ばせていただきました。料理は作る人と食べる人がいて、だからこその心情劇が見どころになるかと思っています。口というものは嘘をつきますけれども舌は正直なもの。表情であれ態度であれ胸中であれ、偽りない思いが染み出してくるものですから。
 さてさて、作る側が料理に込める心情はどんなもの? 食べる側が料理に感じることはなんでしょう? それらがどのように打ち合って恋の歌を響かせますか? すべては著者さん次第。まさしく腕の見せ所というわけですね。
 と、つらつら書いているだけで年甲斐もなくうきうきしてきましたが、みなさまの心を浮き立たせる4味をご紹介いたしますよ! お好きなお皿からお取りくださいましね。

ピックアップ

よい香り、よい甘味、よい恋愛、それらが織り成す無二の物語

  • ★★★ Excellent!!!

 エイレーネ王国にその名を轟かせるカルディナーレ香水工房。フレイヤ・ルアルディはそこに勤める調香師だったが、偶然にも王妃の目にとまってしまったことで店主から疎まれ、職を失ってしまう。再就職もままならず途方に暮れる彼女を救ったのは、彼女の香水に特別な力が宿るとの話を聞いたシルヴェリオ・コルティノーヴィスだった。

 まず目を惹かれたのは各キャラクターの設定や描写が実に濃やかで、それぞれが明確な個性という色を確立していること。そして惹き込まれるのです。彼らの色と色とが交わることで生み出される新色の妙味に!

 甘い物好きなフレイヤさんは困り果てていて、やはり困り果てていたシルヴェリオさんはそれを利用して彼女を雇う。始めはそれぞれの色を主張するだけだったのに、互いの心を少しずつ重ねていき、色味を変えていって。そうなのです。この作品は香りと甘味と恋愛、全部が最重要要素な贅沢過ぎるドラマなのですよ!

 恋愛もの好きな人にも読み応え重視派な人にもお勧めの本作、ぜひ行方を追いかけていただきたく。


(「その恋はお腹から」4選/文=髙橋剛)

甘い匂いから始まるおいしい恋愛~爽やかなざまぁを添えて~!

  • ★★★ Excellent!!!

 伯爵家令嬢エリアーナ・ハワードは婚約者である第一王子アルフォンスに地味でつまらないからと婚約破棄を告げられた。涙を堪えてひとりバルコニーへ逃れた彼女は途方に暮れ――かけたところで声をかけられる。“氷の悪魔”の異名を持つ隣国の公爵ヴィンセント・アシュフォードに。そして彼のひと言をきっかけに、公爵家の料理番となるのだった。

 ヴィンセントさんが言った「……腹が、減った」。まさに本作の象徴です。エリアーナさんはこの言葉に徹頭徹尾応え続けるのですから。

 胃袋をがっちり掴むのは今も昔も変わらない恋愛の極意ですけれども、登場する料理が本当においしそうなのですよ。料理の過程がきちんと書き込まれていて思い描きやすいのもそうですが、ヴィンセントさんや聖獣という腹ぺこ達の反応、これが「おいしい!」を保証してくれて、読んでいるこちらも安心してお腹を空かせられるのです。

 そうしてふたりの距離が近づくにつれ料理に込められた最強の隠し味、愛情もまた増えていって……どうなるものかはご自身の目で!


(「その恋はお腹から」4選/文=髙橋剛)

和菓子屋の少女の先を変えた甘い出遭いと甘やかな出逢い

  • ★★★ Excellent!!!

 和菓子屋の娘である鈴本杏は、なじみの本条家へおはぎを届けに行く道中、本条の嫡男だという克哉に出遭った。彼は使いの褒美だと言い、見知らぬ菓子をくれて……初めて味わった濃厚な洋菓子の甘みは彼女の心を捕らえて放さず、しかして5年の後に再会。そこから杏の新たにして甘い人生が幕を開けるのだ。

 文明開化な風情匂い立たせる和風世界を舞台にしたこの作品、ひと言で語るならば「ロマンス」でした。和菓子しか知らなかった杏さんが洋菓子と出遭ったこと、そして彼女に出遭いをもたらし、甘味の供給源にして歳の差恋愛のお相手・克哉さんと出逢ったこと。どちらもけして飾り立てられているわけではないのに、著者さんの筆が書き起こして掻き起こすもの――杏さんの自分へ対するマイナス感情や甘味への思い、克哉さんへの想いが風情として匂えばこそ、読者の心の真ん中に「ああ、これは運命だ」と刺さるのです。

 とはいえ物語は直ぐに進みません。まるで朝のドラマのように山あり谷ありな杏さんの物語、甘いロマンスと共にどうぞお楽しみください。


(「その恋はお腹から」4選/文=髙橋剛)

誰かを笑顔にしたいからそこへ行く。魔法のキッチンカー開店します!

  • ★★★ Excellent!!!

 レティシアが目を醒ますとそこは魔の森と恐れられる場所だった。そして大怪我をした自分を助けてくれたのが冷酷無比な炎使い、“凍れる炎王”と恐れられるアデルバートと知る、しかし実際のアデルは噂とはまるで違う好青年で、森もまた実に豊かで――ここで暮らすことを決めた彼女は、夢だったキッチンカーをオープンするため奮起する。

 レティさんの料理がすごくいいのです。作っている過程だけでもおいしそうで魅力的なのに、それを食べるアデルさんや誰かを幸せにする幸せな結果があるのですから。

 キャラクターの設定が練り込まれていることはもちろんですが、下味としてしっかり物語に効かされているのですよね。レティさんとアデルさんが互いを信じて惹かれていく恋愛ドラマはふたりが抱える辛い過去によって深みを増していますし、そんなふたりの心の交流がレティさんの夢をさらに強く輝かせていて。

 料理、恋愛、夢。すべてがそれこそひとつの料理のように合わさっているからこその味わいがこの物語にはあります。あなたもどうぞご賞味あれ。


(「その恋はお腹から」4選/文=髙橋剛)