誰かを笑顔にしたいからそこへ行く。魔法のキッチンカー開店します!

 レティシアが目を醒ますとそこは魔の森と恐れられる場所だった。そして大怪我をした自分を助けてくれたのが冷酷無比な炎使い、“凍れる炎王”と恐れられるアデルバートと知る、しかし実際のアデルは噂とはまるで違う好青年で、森もまた実に豊かで――ここで暮らすことを決めた彼女は、夢だったキッチンカーをオープンするため奮起する。

 レティさんの料理がすごくいいのです。作っている過程だけでもおいしそうで魅力的なのに、それを食べるアデルさんや誰かを幸せにする幸せな結果があるのですから。

 キャラクターの設定が練り込まれていることはもちろんですが、下味としてしっかり物語に効かされているのですよね。レティさんとアデルさんが互いを信じて惹かれていく恋愛ドラマはふたりが抱える辛い過去によって深みを増していますし、そんなふたりの心の交流がレティさんの夢をさらに強く輝かせていて。

 料理、恋愛、夢。すべてがそれこそひとつの料理のように合わさっているからこその味わいがこの物語にはあります。あなたもどうぞご賞味あれ。


(「その恋はお腹から」4選/文=髙橋剛)

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