定年を迎える上司との差し飲みの席で、つい怖い話がないか聞いてしまった男。元来、穏やかな上司が記憶の糸を手繰る様に話したのは、嘗てまだ両親と共に暮らしていた頃の実家での出来事だった。 作者のじっくり読ませる手腕は人間模様まで立ち上がらせる。人生の節目に過去の怪異を語り、去って行く上司は、 一体何を見たのだろうか。 そして 何を 残して行ったのか。何かが暗がりの中で、凝っと潜んでいる。それは昏い階段の陰にも、ヘッドライトを光らせて流れる道路の傍の暗がりにも。 きっと。
本来、階段とはあり得ない場所に道を作る。そこは人の通り道ではない。文明によって足を伸ばしてきた人類は、時として異界へと辿り着く。現世とは異なる場所。其処の住人と遭遇することがある。階段の向こうには、何かがいるかもしれない。それが人とは限らないのだ。
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