概要
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【あらすじ】
1616年、津和野藩主・坂崎出羽守直盛は、将軍徳川秀忠の娘・千姫強奪を企む。事前にそれを知った秀忠は、兵を出して坂崎家の屋敷を包囲、将軍家兵法指南役・柳生宗矩を使いとして派した。宗矩は直盛の親友でもあった。
この騒ぎを知った英国商館長リチャード・コックスは、英国人で幕府の侍となった三浦按針に、このような騒動が起こるのは、野蛮人の証拠だと断じた。また、野蛮人とは徳(virtus)がない人で、徳(virtus)の無い人の国とは、通商する価値はないと断言した。
これを憂慮した按針は、宗矩
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!柳生二蓋笠に込められた直盛の人生と思い
恥ずかしながら、坂崎直盛のことは「千姫事件の首謀者」というぐらいの知識しかありません。そして、そんな状態で読み始めたこの物語、途中、幾度となく「これはIF? 千姫事件の本当にあった裏話?」と思い、史実とIFの判別がつきませんでした。それぐらい自然に、直盛と宗矩の交流とその人物像が描かれていました。
物語は、直盛と深い親交があった宗矩の昔語りという形で進んでいきます。血気盛んな若き頃の二人の出会い、そして、守るべき者や役目を負った立場になってからの二人の関係。
豪胆でありながら情に厚く憎めない。きっと宗矩もそんな直盛のことを誰よりも信頼し、大好きだったのだと思います。かくいう私も惚れまし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これは「徳」を問う物語
読了したので書きます。
儒学で大事にされている「徳」という概念。勿論、現代社会でも重要視されてきた概念ですが、儒学が学問の中心だった昔はより重要だったと想像することが可能です。そして、今回はこの言葉が物語の核心を占めます。
物語の主役となるのは、柳生宗矩と坂崎直盛。前者は徳川の剣術指南役となり、後者は千姫事件の主犯となった人物です。更に、この物語は単に当事者たちの目から届けられる話ではなく、当時日本に逗留していた英国人のリチャード・コックスの視点も通しています。日本だけの事件ではなく、他国の人物の目を通しているのも特徴の1つです。
若き日の2人の出会いから関係構築が丁寧に描かれます。キ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!年月をかけた友情の物語
重厚な歴史小説を読んでいたら、読み終わるころには、これは友情小説だったのだと気づかされました。
二人の武士を中心に描かれる作品で、舞台は戦国時代末期。
でも、焦点は戦乱そのものではなく、その時代を生きた二人の男が、長い年月をかけて築き上げる「友誼」に置かれています。
その小さな出会いが少しずつ積み重なり、互いを理解し、認め、支え合う関係へと変化していく過程が丁寧に描かれています。
友情が、二人の行動の積み重ねによって表現されていく。
そのため物語後半になるほど、何気ない会話や視線のやり取りに重みが宿っています。
歴史好きはもちろん、歴史そのものよりも人と人との関係に惹かれる方にもお…続きを読む - ★★★ Excellent!!!セリフに宿る、武士たちの友誼と徳
歴史に詳しくない身でも、作者様の物語はぐっと引き込まれます。
坂崎事件という重い入口から始まり、「この人物はなぜそこまでしたのか」という謎が、柳生宗矩との出会いへと遡っていく構成がとても面白かったです。
最初の坂崎直盛は、傲慢で乱暴で、まさに手に負えない若者に見えるのに、宗矩の肘打ちをきっかけに何かが変わっていく。その変化が一気に説明されるのではなく、再会やおりん殿の件を通して、少しずつ「この人は義に厚い人なのでは」と見えてくるのが堪らない。
作者様の作品は、いつも人物同士のセリフの応酬が魅力的だと感じているのですが、本作でも宗矩と直盛のやり取りがとても良かったです。反発し合っているよ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!樹によってその実が知られるごとく、長編もまた短編によって知られる
応仁の乱からおよそ150年続いた日本の戦国時代。その最後の戦いとなったのが、慶長20年(1615年)の大坂夏の陣であり、そこには数々のドラマが生まれます。
そして本作も、二人の男の友情を軸に、関ヶ原の戦い前夜から大坂の陣の一幕――千姫奪還事件までを描き出す歴史ドラマです。
実はこの作品、同じ題材の短編(『二蓋笠(にがいがさ) ~柳生宗矩、千姫事件を捌(さば)く~』、https://kakuyomu.jp/works/822139839339730680)がすでに公開されておりますが、実際は本作の方が先に完成しており、上記は本作の短編バージョンという位置づけです。(ちなみに上記短編は、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!徳とは
千姫事件を扱った、歴史ミステリーともいえる本作。
板崎直盛が主人公であり彼の示した亡き友への友情、柳生宗矩との言葉を受け入れ自害に果てる様も、燦然と燃え盛る「徳」なのでしょう。
ですが、柳生宗矩。
彼が直盛の死後に示した行いこそ、私には「徳」の形だと感じた。
「宗矩は変わらず二蓋笠を使いつづけた」
最高権力者の意向に抗い続ける。その理由も共感も、誰にも求められない。
不撓不屈たるを淡々と「続ける」
その在り様こそが「徳」であると。
未読の方には、是非ふたりの「徳」の示し方を体験して頂きたい。
付記すると、宗矩も直盛も、若き日はむしろ欠点の多い人物だったことです。
彼が年月…続きを読む