とても温かく、切なくて、そして可笑しい物語

設定が秀逸です。「子猫だと思って助けたのがぬいぐるみだった」という導入だけで、二三夫という人物の人生が一瞬で伝わってきますし、「首尾よくいかない男」という定義が、その後の異世界編でも一貫して物語の軸になっているのが見事でした。
単なる不幸キャラではなく、「失敗する才能」を持った人間として描かれている点が、とても優しくて新鮮です。

異世界ニッポンポンも素晴らしい発想でした。剣も魔法もなく、「恥をかくこと」「失敗すること」「叱られること」が徳になる世界観は、この物語だからこそ成立する設定で、ギャグと哲学が自然に同居しています。鹿野師匠の荒っぽい愛情と、喜古師匠の飴に込められた情緒は、まさに“鞭と飴”の象徴で、読者にとっても精神的な拠り所になっていました。
小武というキャラクターも非常に良い存在です。単なるトラブルメーカーかと思いきや、二三夫の孤独を映す鏡のような人物で、最後まで完全には善人にならないところがリアルで魅力的でした。二人の関係が「友情」と言い切れない、歪で不器用な絆である点が、この物語のテーマとよく噛み合っています。

総じて、
失敗し続けることでしか辿り着けない居場所がある
というメッセージが、押しつけがましくなく、飴のようにゆっくり溶けて心に残る物語でした。とても完成度の高い異世界再生譚だと思います。