汚れを知る手が、誰かの心を溶かしていく
- ★★★ Excellent!!!
本作で描かれる「あの手」は、決して消毒された清らかな手ではありません。他者の汚れを拭い、現実と格闘してきた泥臭い手です。
しかし、だからこそその手には、凍りついた思考を「じゅわっ」と溶かしてしまうほどの圧倒的な体温が宿っています。
「バターをのせたら溶ける」「小鳥をのせたら眠る」といった具体的な比喩が、その手の持つ柔らかさと強さを鮮明に伝えてくれます。
読み終えた後、自分の両手を見つめ直したくなりました。自分も誰かのために手を使い、心を尽くすことで、いつか自分だけの「音を立てる手」を育てていきたい。そんな静かな決意をさせてくれる、温かい慈愛に満ちた一編です。