じゅわっと音の鳴る手

蒼衣

第1話 熱を帯びた手のひら

「手」を育ててみたいと思う。


この人生において、自分の「手」を。




あなたの「手」は、人から出るさまざまに汚れたものをぬぐってきたから。


それを「汚い」とも言わずにきれいにしてあげてきた手だから。




人を憎まず、人を支えたいと日々頑張って生きているあなたのその手は、わたしの脳細胞の血管が滞りそうでも、「じゅわっ」と音を立てて溶かしてしまう。




おかげで、わたしは今日も、いくらか正しく思考ができます。




わたしの「手」も、いくらかあたたかいと言われても、あの「じゅわっ」とした感触には負けるのです。




たとえば、あの手にバターをのせたら溶けるでしょう。




たとえば、あの手に小鳥をのせたら眠るでしょう。




たとえば、あの手で料理をすれば、食べた人の心が癒えるでしょう。




たとえば、あの手に触れれば、話す気持ちになれない人が、一言言葉を発してみようと思うのでしょう。






決して清潔ではないその手に触れると、さまざまに人が何かを見つめて今日を生きているこの世界が見渡せそうです。




人の心の灯りがちゃんと見えるのです。




だから、わたしも「手」を育てたいと思いながら、日々目の前にいる人を見つめます。




憎しみも、悲しみも、人の気持ちを理解できるようになって、いつか脈絡なく、じゅわっと音を立てる手に育つといいなと、そう願いながら。





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