「天を背負う」という信仰は、見方を変えれば、巨人を未来永劫縛り続ける残酷な重労働でもあるように私は思いました。あの男が引きずってきた異様な長刀は、山を壊すための武器ではなく、巨人を苦役から解き放つための「道具」だったのではないか?山が裂けた時に流れた血と、巨人の穏やかな瞳。それは恐怖の光景ではなく、長い長い一日の終わりにようやく眠りにつけた安堵そのもののようで美しい。神話が終わり、ただの岩塊となった山の麓で、男もまた重い柄を離して眠る。その静かな幕引きに、言葉にできない納得感がありました。
きっと描かれていない長い物語があって、そのなかの始まりなのか、途中なのか、最後なのかは分かりませんが、一つのシーンを切り取ったような短編でした。読後感がとても不思議で、読み終わってからいつまでもその後はどうなったのだろうかとか、そもそもでいだら山や大長物を持った男はどんな存在でどのような過去があったのだろうかと考えてしまいます。
長い長い刃物を持った男と、奇怪な神話のようなお話。
天を背負う巨人のごとき岩の山。村人らの崇敬をあつめるその山をめざし、襤褸をまとった一人の男が引きずるのは、一里にもわたる巨大な剣。巨大な山と巨大な剣を携えし男が対峙したとき。そこに繰り広げられた光景、それは、まさに天地のさだめとしか言いようがなく。人はただ、怯え、祈り、茫然と見とどけるのみ。作者様ならではの、美しくも壮大な山界を舞台とする、神話のごとき一幕です。
岩山の描写が強く、神話と生活の距離感を一息で成立させる作品である。そこへ現れる異様な男と途方もない長物が、物量で不吉を連れてきて緊張が早い。娘の視点がぶれず、母を守ろうとする切実さと無力感がそのまま怖さになる。神話を現実へ引きずり出し、目撃した余韻だけを残す。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(175文字)
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(874文字)
でいだら山。その名前だけで、でいだらぼっちを思い起こす。天を支えるような巨大な岩。その村に、一里に及ぶ、刀を引きずった男が現れる。男が何者か、何の目的があるか、明確な説明は無い。けど、そんな説明、必要なのだろうか。圧倒的な描写。ぜひ、ご覧ください。
この作者先生の作品、ともかく、読者の期待を裏切りません。いえ、もっと言えば、読者の期待や創造の遥か上を行っています。私が、最近、辿り着いた最終結論は、「近いうちに、凡庸な小説は、生成AIに負ける時代が、もう、そこまで来ている」と言う冷徹な現実です。この生成AIに勝てるのは、「天才」 「狂人」 「変態・変人」 しか、いないと思っています。さて、この作者先生は、上記のどれに当てはまるのか?ハッキリ言えば、「天才」かもですよ。現在の生成AIで、このような作品は、まだまだ書けないのですから……。
ここに描かれた場面は、一人の少女の目に映ったものであり、物語の背景の全てを詳らかに語るものではありません。 ですが……いえ、だからこそでしょうか、浮き彫りになったそれぞれの場面が五感に訴える様なリアルさを伴っているのです。 不思議な重みのあるこの物語を、是非。
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