桜は散る。散るけれど、それは落ちた先にまた新しい、そして最後の桜吹雪を描き出す。水辺に咲く桜が水面に描きあげた桜吹雪に目をうばわれたことのある人なら、ひょっとすると、こんな美しい光景を見ることができるかもしれません……。川のなかに、桜色の龍が翔ぶ。
満開の桜が、風に吹かれて散っていく。その光景にしみじみと思いを馳せる主人公。川に視線を落とすと、そこに在るのは花筏。そしてそこに見た幻想的な光景に、思わず感嘆の息が漏れる。短い作品でありながら、とても美しい余韻を心に残してくれる作品です。まだ桜が咲いていない季節でも、この作品を読むとその光景をありありと想像して思いを重ねることができます。桜が咲くころに、わたしはきっとこの作品を思い出すでしょう。風景の中を幻想的な怪奇が通り過ぎていく、とても好きな作品です。本当におすすめです。ぜひぜひご一読ください。
今週末は暖かいようです。例年より早く桜が咲く…かもしれませんね。我が家の近くにある川岸にも桜が咲きます。そのときが来たら、桜だけでなく川にも注目してみようと思います。川に住む竜が、花びらを借りて姿を現すかも…?
冬なのに、心は一足飛びに春に舞い降りる。そんな体験をしました。
文字の選び、時間の運びで日本の雅を表現された作品は、桜の香りと儚さだけでなく、その背後に隠された強さと生命力の畝りが描かれている。読者の美意識をくすぐる短編です。
花の色は移ろい乍ら散って行く。 それは自然の理であり誰彼からの賛辞も懸想も、何処吹く風。 散っては落ちる 川面の上。桜の花の下には川が流れる。 花の終わりの吹雪の中を薄紅色の龍が舞う。長い川面に浮き沈み、時に玉兎の様な紅い瞳で睨みを効かせ、静々と滔々と、大海を目指しては 桜色の身を翻す。連綿と連なる花弁の可憐さ。 川面に集まりて貌を成す。恰も龍に準える粋と、それに応える紅い瞳。 美しく幻想的な花道を征く。
古き良き時代の日本映画を見ているようです。市川右太衛門が主役をしていそう。文字だけでこんなに美しい風景が描けるなんてすごい。目前で竜の尾が消えていくのが見えるようです。
綺麗な言葉の連なりです。情景が目に浮かび、なんだか切なく爽やかな気持ちになりました。
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