会話の一往復毎に感情の距離が数ミリ変わる―― そんな物語を読みたい方へ

※第二話までの内容を踏まえたレビューです。

雪の日の自転車事故、ブレーキ修理、提出物、カフェ、キャラメル。
どれも日常的で地味な出来事なのに、
会話の一往復ごとに感情の距離が、数ミリずつ確実に変わっていく。

本作は、派手な事件や強い煽りを使わず、
人物同士の摩擦だけで物語を前に進めていく。

主人公の周とヒロインの陽咲は、性格的に相性が良いとは言えない。
だからこそ最初から噛み合わないが、その衝突は単なる口喧嘩ではなく、
価値観の違いとして丁寧に描かれている点が印象的だ。

注目したいのは、恋の進展が
「行動」と「責任」の積み重ねで描かれているところ。
好意より先に信用が問われ、許しより先に約束が置かれる。
その順序が、陽咲というキャラクターに強い説得力を与えていると感じた。

キャラメルとコーヒーの「甘さと苦さ」のモチーフも一貫しており、
二人の関係性や、ヒロインの抱える事情をさりげなく照らしている。
優しいが、決して軽くはならない。

作者の筆致の繊細さと安定感を同時に感じさせる一作。

物語はまだ序盤だが、
じっくりと人間関係が育っていく恋愛ものを読みたい人に、
安心して勧められる作品である。