平たいパンケーキから鞭へ。友情と下ネタが世界を丸くする短編、余韻残る。

 『鞭とパンケーキ』は、地味な名物パンケーキを「これでいい」と受け止める導入から、会話の勢いで読者を一気に運ぶ1話である。竹子の下ネタ連発と、持ち込み禁止リストが増えていく女子校の回想が、笑いの温度と2人の関係を同時に立ち上げる。

 ケーキを買いに席を立った隙に、ビジネススーツの男が「お会いできて光栄でした。では、失礼いたします、◎◎子女王様」と深々と頭を下げて去っていく場面が印象的。主人公が「人違い……?」と固まる、その間の空気の薄さまで伝わり、日常がすっとズレる感触が気持ちいい。その違和感が、競馬場で鞭の軽さや回数の決まりを聞く描写へ自然につながり、タイトルの2語が、甘さと痛み、偏見と理解の距離を測る目盛りになる。最後の「世界に3人」の報告まで含め、笑いで押し切りながら、人の癖を裁かずに眺める視線が残る。