剛弓ツナと八尾の空狐が駆ける、平安怪異譚の熱量が最後まで濃い読後感
- ★★★ Excellent!!!
『ツ ナ』は、渡辺綱の土蜘蛛討伐から始まり、陰陽師と妖狐が加わった瞬間に、怪異譚の射程が一気に広がる作品だ。平安の空気を残しつつ、ところどころに現代的なたとえや語り口が差し込まれるため、古典の敷居を下げながら、物語の勢いを保っている。綱が「ナベさん」と呼ばれてしまう軽妙さと、洞窟や朱雀門で突きつけられる不気味さが同居しており、読者の気持ちを緩めたところに、次の異常が入ってくる構成が効いている。
印象に残ったのは朱雀門の再封印戦だ。封印の作業そのものより、漏れ出す気を喰い合いながら集まってくる鬼の群れを、ツナが半弓と太刀で崩していく場面に、作品の強みが集約されている。剛弓の一矢が眉間を貫いていく描写は痛快で、同時に「退治できない存在を、弱めて封じる」という理屈が、戦いの手触りとして伝わってくる。そこへヤツデの距離感の近さと小馬鹿にする口ぶりが乗り、恐怖と可笑しみが同じ場面で成立する。読者は笑いながら緊張し、緊張しながら次話へ送られる。
連載を追うほど、ツナが背負わされる役目は大きくなり、星の剣の回収や神域の気配が、世界を「大きい話」にしていく。ただし中心にあるのは、無口な英雄ではなく、疑問を口にして殴られて記憶を飛ばすツナの生身であり、その軸がぶれないから、神々や眷族が出てきても読みやすい。更新のたびに、次はどんな理不尽と美しさが出てくるのか、楽しみにしている。