レビュータイトルは、本作品の最後の一文だネタバレは避けるが、この文章には、本作品のすべてが込められているあまりに美しい名文だ物語は、水泳を五年前に辞めた主人公が、再び水に入るところから始まるだが、また水泳を始めるわけではないそこまでの情熱は、もう、ないただ、足首だけが、あのときの感覚を残している──そういう一文なのだ全体を要約し、かつ文学的に締めた名文だが、それは物語を一通り読んだあとで光るものである是非本作品を一読し、この名文を心で味わってほしい五千文字程度の短編なので、すぐに読み終わるはずだ
もと水泳選手だったわたしにとって、とても興味深いテーマでした(わたしは、クロールと背泳ぎ)一つのことを極めていく。そこでぶち当たる壁、葛藤、諦めや希望──うまくいくこと、いかないこと。さまざまな試行錯誤や、自信喪失、逆に自身を奮い立たせられる出来事。それらの思い出が一気に蘇りました。文章も読みやすく、さらには上手く、淀みなく、そして、なんとも言えない読後感を与えてくれます。この胸に湧き上がる感動はなんだろう……やはり、何かに打ち込む人の姿は美しい。改めて、それを思わされる素敵なエッセイでした。
バサロという水泳のキックは、主人公の水泳人生そのもの。柔軟性にかけ、綺麗なフォームで泳げなくても、キックを磨くことで、速く速くなってきた。バサロは、主人公のこれからの人生も支えてくれる、心の寄り処になっているのだと思う。
キック。ただ、それだけに取り憑かれた競技人生を描き切った物語です。私は水泳競技に詳しくありませんが、専門用語が並ぶのに置いていかれる感覚がまったくない、見事です。いえ、それどころか読んでいるうちに、水中に一緒に沈み、肺が苦しくなる……そんなところまで連れていかれるような、卓越した描写力が光ります。派手な成功譚ではないけれど、確かに誇れる人生がある。何かに打ち込んだ経験がある人なら、競技が違っても必ず刺さる。そう言い切れる作品でした。
バサロという水泳で言うキック。主役の女性は、それを極めることに意味を見出し、ひたすら励んできました。水の中の動作が緻密で、大変惹き込まれます。それが静かな筆致で描かれ、水の中の様子がつぶさにわかるのです。バサロは水の中で生きるために必要でした。苦い思いとともに、水の音を聴きながら、彼女の思い起こす人生を見守ってください。
スポーツをしていて、途中でやめた人はたくさんいると思う。限界が見えてくるときの人もいるだろう。限界を見たくない人も。選ばなければならない。他の誰でもない。残るのか去るのか。独りだ。ぜひ皆様読んでください。
勝てなかった事より、身体が何を覚えているかを描かれたエッセイ。バサロという技術に人生を重ねられるのは、バサロに賭けた年月があったからこそ、描くことが出来たのかなと思いました。
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