未だ色褪せない青春の日々がここに──。

本作は著者のスペイン滞在中の話である。
そこでの日々は著者にとって、青春の全てが詰まっているものだった。

そこにいるのは、日本からはるばるスペインという場所を選び渡ってきた若者たち。
ある者は現実的な、ある者は夢のような目標を持っている。
そして著者は映画監督になるという夢を持っていた。

あの時の夢を叶えた者も、そうでない者もいるだろう。
もし叶えていないとしても、輝かしい青春の日々に抱いた夢はきっと形を変えて、今の自分を形作る一部となって確かに存在しているのではないだろうか。


懐かしい思い出はセピア色と表現されるが、著者の作品に出てくるスペインの情景は、鮮やかで魅力的なコントラストで読者の脳裏に映し出される。

ラストの遠ざかる海の淡々とした短い描写が、思い出となった海との時間的距離感とリンクしてとても良いと思った。

未だ色褪せないその思い出をぜひ、その目で確かめて欲しい。

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