一万円札と引き換えに永久機関を手に入れる能力

ある夜、男子大学生は一万円札と引き換えに、永久機関を無から生み出せる能力を手に入れた。
それは装置でも理屈でもなく、世界の法則を無視して「エネルギーを発生させる」という、あり得ない力だった。

最初は誰にも知られず、ただ静かに存在していたその能力は、やがて国家・市場・研究者の視線を集めていく。
管理しようとする者、独占しようとする者、説明しようとする者――
だが、力を持った本人だけが理解していた。

一人で抱えるには、この力は危険すぎる。

彼が選んだのは、隠すことでも、売り渡すことでもなく、
「一万円で、誰にでも渡す」という最悪で最善の選択だった。

これは、世界を救う話ではない。
世界が壊れ始める瞬間を、最後まで見届ける物語である。