命はいつも、人の手にあまる

最初は、とても強いタイトルに惹かれて読みました。

この物語には、作者である月兎耳さんがヘビを飼育したときの事柄が記されています。

そこには、私のまったく知らないことがたくさん並んでいました。
ヘビの種類。
模様の分類。
飼育下で与えられる餌の名前。
ヘビに、対応できる病院の種類。
数え切れない程です。

特定の情報の組み上がる果てにある愛育。
私が、まったく関わって来なかった世界でした。

生き物の飼育なのです。
自分自身を飼育することすらままならない私では、至難の向こう側にある行為です。

でも読むうちに理解出来ることが浮かびます。
〝好きなんだな〟という感慨です。
その対象に関わりたいという気持ちは、ひしひしと伝わりました。

こんなものは、生き物と関わる方には普遍的な情感なのかもしれません。
ただ、私には新鮮な感情でした。

本作は悔悟録、なのでしょう。
悔悟や懺悔は、自分がしでかした過ちがいつかまた形を変えて繰り返される。
そう案じる心の働きだとも言います。

ことに命を損なうことは、心にあまる。
記憶に残る。たぶん幾つも積み重なる。

記憶に残る命からの伝言は、その人の心を作っていくのだろう。
そう思えました。

様々な感情に触れられる、考えさせられるエッセイです。
そして、とても興味深い。
おすすめできるエッセイです。