古い写本を読み続ける時間と、言葉を待つ人たちの話。
- ★★★ Excellent!!!
埃と、かすかな甘さが混じった、時間の堆積した匂い。
古い紙の匂いをそう表現できるところが、この作品の好きなところだった。
『白紙の続き』は、古書修復という静かな仕事の中にある感覚を、言葉で丁寧にすくい取っていく物語だ。和紙が呼吸すること、紙に残る時間、手を動かし続けることが、特別な説明をされることなく、日常として描かれている。読むたびに内容が変わる写本という不思議な存在も、驚きや謎として強調されず、ただ「そこにあるもの」として受け止められていく距離感が心地いい。
すべてを説明しきらず、それでも名前を呼ぶこと、手を動かすこと、そばにいることを大切にする物語だった。