気づいた時には、もう遅かった。「ほのぼのした日常」から一変して……

 出だしの感じを見て、「あ、これはほのぼのと『時節の空気』なんかを味わえる系の作品かな」なんて感慨を持ってしまいました(読む前にジャンルとか確認しない人)

 そして読み進めていったら、「あれ? なんか不穏なことに?」と。

 星降るような美しい夜を過ごす描写。そこで妹と過ごしている兄。
 妹はものすごく可愛いという。

 これだけ読むと本当に、可愛い妹が出てくる楽しいホームドラマ的な何かかと。
 
 でも、その先に待つのは「ガッツリとしたホラー」とでも言いたくなる展開で……。

 この、「正体不明」な感じは、SFのようでもありホラーでもある。そんな「深淵を覗き込む」かのような不安を想起するイメージがありました。

 関わることによって、個人の存在そのものが無へと帰すような。一人一人の抱える恐怖とかその他の感情なんてちっぽけに思わされそうな。
 そんな底が知れず、同時に大きすぎるスケールを持った「何か」。

 そういう何かにいつの間にか狙われ、致命的な状況にまで追い込まれるという。
 「気づいた時には、もう遅かった」という絶望感。序盤でほのぼの感を味わってしまった読者は、もしかしたら「彼」と同じ運命を辿ってしまうかも。